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その五 藤井システムとは

最近の将棋新聞、雑誌はもちろんのこと、テレビ将棋対局を見ていても、「藤井システム」の名前が出てこない時はないくらい様々なところで耳にします。
今、将棋界を席巻している「藤井システム」とは何か。

ここでは、将棋専門の新聞や雑誌は読まないけど、テレビ将棋対局は見るという、級位者(せいぜい初二段くらいまで)の人たちのために、藤井システムを分かりやすく説明してみようと思う。
なお、あくまで、級の人を対象にするので、細かなところでは誤りがあるかもしれないが、(プロやアマ強豪の人は)目をつぶって下さい。

駒の動かし方を覚え、詰みがどういう状態かを理解できればもう将棋を指すことができ、3手の詰みが分かるようになれば、もう8級位の力は付いてきたことになります。そして、このくらいになると、玉は、居玉(最初にいた場所のまま)より、囲った方が負けにくくなることも理解できるようになります。
そうすると、将棋には様々な戦法がある事に気づきますが、大きく分けると、居飛車と振り飛車に分かれます(それぞれ主に指す戦法により、居飛車党、振り飛車党と呼ばれます)。
さらに、振り飛車の中には、中飛車、四間飛車、三間飛車、向い飛車とありますが、今プロアマ間で最も指されているのが四間飛車です。6筋に振る振り飛車を四間飛車と言いますが(振り飛車先手:今後は全て振り飛車先手で考えます)、この四間飛車が他に比べて最もバランスが良く負けにくい為に最も良く指されるようになったのです。

次に、居飛車の戦法ですが、振り飛車に対する昔の戦法はほとんどが急戦でした。急戦とは、玉の囲いを舟囲いという簡単なものにして、早めに仕掛けて来るものです。急戦の中身は、棒銀、5七銀左、山田定跡、4五歩早仕掛けなどたくさんあります。

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(第1図は、四間飛車と居飛車棒銀の基本的な形)

ここに至るまでの従来の手順は、初手より、7六歩・3四歩・6六歩・8四歩・7八銀・6二銀・6八飛・5四歩・4八玉・4二玉・3八銀・3二玉・3九玉・1四歩・1六歩・5二金右・2八玉・8五歩・7七角・7四歩・6七銀・4二銀・5八金左・5三銀左・5六歩・9四歩・9六歩・4二金直・4六歩・7三銀・9八香・8四銀

この後、振り飛車は、飛車を7筋に回して棒銀を向かえ打つ。
居飛車側は、この棒銀がさばけないと、有利にならないのだが、仮に仕掛けが成功したとしても、振り飛車の美濃に入った王様が固く遠いため、なかなか勝つことができませんでした。



そこで、居飛車側はどうしたか。美濃と同じ固さを持つ、左美濃と美濃以上の固さを持つ、居飛車穴熊を開発したのです。

左美濃は、非常に優秀な戦法で、プロの森下や高橋は、勝ちまくっていました。

(第2図は、藤井システムが現れる前の、居飛車左美濃と四間飛車の形)

この形は、居飛車側にのみ戦いの先行権があり、それでいて玉の固さは同じか振り飛車以上ということで、振り飛車側は勝ちづらいのです。





そこへ、藤井が、左美濃に対する新たな研究をひっさげ、登場したのです。
この研究こそが、本来の「藤井システム」と呼ばれるものでした。


(第3図は、藤井システム対居飛車左美濃)

特徴は、4筋の位を取っていることと、玉が3九にいること。6五歩と角道をあけ、2六歩から2五歩と敵の玉頭を攻めることができる上、自分の玉は一段下にいて戦場から遠いため、反撃を受けにくいのです。

この藤井システムは、森下をして「藤井に左美濃では勝てない」と言わしめたほど、完成された戦法でした。そして、プロ間ではすでに左美濃は「消えた戦法」となりつつあるのです。








一方、居飛車穴熊の登場は、振り飛車党のプロを居飛車に転向させるほど強力なものでした。

(第4図は、振り飛車対居飛車穴熊の昔の基本形)

穴熊に組んで、あとは飛角をさばいてしまえば勝ちというこの戦法は、アマプロ問わず大流行しました。
この居飛車穴熊の攻略法を振り飛車党のプロ達はいろいろ考えましたが、決定的なものはありませんでした。



そこへ、場合によったら居玉のまま振り飛車から急戦を仕掛ける、という革新的な発想を持った戦法が登場したのです。

それが「藤井システム」です。(厳密に言えばバージョン2だが、居飛車穴熊に対しても、左美濃に対しても藤井システムと言う)

この藤井システムのすごいところは、単に居飛車穴熊を攻めるだけの戦法ではないと言うことです。もし、居飛車側が、穴熊に入るのをやめて、急戦に変えたとしても、それに対応できる柔軟性を持っているのです。



それでは、具体的に見てみましょう(あくまで、級位者の為に基本的なところだけ説明します)。

第5図を基本図とします(まだ、居飛車は、急戦か穴熊かはっきりとは決めていない)。

端を受けていないのが、普通の居飛車対振り飛車戦と違うが、居飛車にしてみれば、端に一手かけるよりも、少しでも早く穴熊に入りたいと言うことで、端は突かないのです。
また、振り飛車の玉がまだ、一歩も動いていないのも、特徴的ですね。


もし、ここで、居飛車が急戦に来たらどうするか?
すなわち、5二金右・5八金左・7四歩・4八玉・4二銀・3九玉・5三銀左・6七銀・7三銀・2八玉・8四銀と攻めて来ても、振り飛車の玉はすでに、美濃の中、これなら強い戦いができます。

(第6図:これは昔の棒銀と四間飛車の戦いとあまり変わらない:第1図参照)

振り飛車側は、居飛車が常に急戦に来ることと居飛車穴熊にもぐることを想定しながら、その両方に対応できるように駒組を進めているのです。


では、ここから(第5図から)居飛車穴熊にされたらどうするか?
すなわち、5三銀・5八金左・3三角・3六歩・2二玉・3七桂・4四歩・6五歩・1二香
この後、1一玉から、2二銀・3一金まで、がっちり穴熊に組まれては不利になるので、ここから、振り飛車が攻めます。
2五桂・2四角・4五歩・4二飛・4四歩・同銀・4五歩(第7図)

これで居飛車はつぶれている。角が玉をにらんでいるのが大きい。また、6四歩と飛車のさばきも残っているので必勝だ。





もちろん、同じくらいの棋力のもの同士ではこんなに簡単に良くはならないが、四間飛車が、藤井システムに組めば、単純に居飛車側は穴熊には組むことができないのも確かなことなのだ。

そこで、穴熊側は様々な工夫をして、穴熊に組もうとする。
たとえば、7四歩を突いて、急戦でいくよ、というふりをして、玉を4八に上がらせてから穴熊に組んだり、場合によっては穴熊を放棄して、玉が角筋からはずれるように3筋に戻ったりすることもある。


今、NHKの将棋対局などで頻繁に出てくる四間飛車(藤井システム)対居飛穴もどき(居飛穴に組もうとする戦法を呼ぶ正確な呼称はないので、私は勝手に「もどき」を付けて呼んでいる。)の戦いは、こうした背景の上に成り立っている、せめぎ合いなのだ。

昔の四間飛車は、まず玉を美濃に囲ってから、攻め合いを考えれば良かったが、今では、単純に穴熊に組まれては作戦負けとなってしまうため、序盤の一手一手から慎重な駒組の戦いが始まっているのです。

こうした知識を仕入れた上で、将棋対局を見れば、つまらない序盤の駒組も少しは面白く写るのではないでしょうか。
また、もっと詳しく知りたいと言う人は、ちょっと難しいですが、次の本をお薦めしますので読んでみて下さい。

・藤井システム(毎日コミュニケーションズ)
・居飛車穴熊撃破(日本将棋連盟)
・杉本流四間飛車(毎日コミュニケーションズ)

1999年03月24日


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