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名人戦第3局、速報感想

2004年、第62期名人戦第3局の速報感想です。

名人戦の棋譜速報は有料なため、この感想は、BS放送のあとからのアップとなります。
BSは、第1日目、午前9:00〜10:00、午後6:00〜6:30の放送、第2日目は、午前9:00〜10:00、午後6:00〜6:30、深夜00:00〜00:15の放送予定となっています。
したがって、更新の予定は、1日目は、2回(午前10時、午後6時半過ぎ)、2日目は、2回(午前10時、午後6時半過ぎ)となります。
(2004/05/12AM10:30)

この第3局は、先手羽生名人、後手森内竜王、です。

先手、羽生名人の▲7六歩▲2六歩に、森内竜王は、4手目△1四歩と突いた。後手一手損角換わりの出だしである。

形は違うが、先日の朝日オープン第4局で、羽生名人が後手を持って指した戦法。今度は、先手を持ってとがめて下さい、と言う訳だ。

第2局と違い、最新定跡を追うと言うよりも、一手一手考えながら進むため、進行もそれほど早くはならないだろう。

(5月12日午前10時30分記)
1日目終了局面。

左図を見てもらえば分かるように、結局、角換わり腰掛け銀に進んだ(但し、後手の1手損)。
BS放送の解説は、藤井九段。まだ、駒組み段階なので、あまり解説するところもなく、淡々と手を進めていたが、△9六歩と突いた辺りでは、先手が▲3七銀から▲4六銀と早繰り銀に出る順の解説もしていた。
しかし、先手がこの手順を見送ったため、結局、双方端歩を突き、腰掛け銀へと進むことになった。

後手番一手損角換わりの後手の利点としては、△8五歩と突いていないところにある訳だが、もし、この後、▲6六歩▲3七桂▲7九玉から▲4五歩△同歩▲3五歩の良くある角換わりの攻めをした場合、▲7五歩が甘くなる(すぐに△8五桂と跳べる)と言うことがある(BS解説)。
それでも、羽生名人が、同型に進めていき、何らかの新しい攻め筋を披露するか、それとも、朝日オープンで深浦選手権者が見せたように、▲4五歩の位を取って攻めの体勢を築くか、明日の羽生名人の作戦に注目したい。
(5月12日午後6時40分記)
2日目が始まった。封じ手は、もっとも自然な△5四銀。封じ手に1時間半近く考えていたらしいが、その後の展開を読んでいたのだろう。対して羽生名人は、▲7九玉。

BSでは、藤井九段の他に、中村八段や佐藤(康)棋聖が来て、解説していたが、まだ、駒組み段階なので、それほど細かい手順の解説もないな、と思っていたところに、10時ちょっと前、森内竜王が、△6二飛と指した。「これは、ちょっと予想できませんでしたね」(佐藤棋聖)と言っていたように、この段階では珍しい手のようだ。
具体的には、「△6五歩を突きたい手」(佐藤棋聖)で、飛車を回らずに、△6五歩を突くのは、▲6六歩の反発を気にしたと言うことらしい。
しかし、後手番ながら、(△3一玉と追随するのではなく)積極的な一手で、好調森内を物語っているようにも感じる。
今度は、この森内竜王の研究、構想に対し、羽生名人が、どのように応えていくか、中盤の難所にさしかかった。
(5月13日午前10時20分記)
上図より、羽生名人は、▲6六歩を突き、△7三桂に▲8六銀と上がったのが機敏。△6五歩が見えているだけに、一瞬そっぽに行くようにも思えるが、▲7五歩からの反撃を見ている。
これに△6三金と受けるしかないようでは、後手からの仕掛けはなく、結局△8二飛と戻り、後手は先手の仕掛けを待つしかなくなった。

対して、先手も容易に仕掛けられないのでは、と思っていたのだが、羽生名人は、俄然▲4五銀と仕掛けた(左図)。
一目、△同銀▲同桂△4四銀の後、△3七角が残り、先手が大変そうに見えるのだが、それは▲7一銀と打ち、△5二飛に▲6一角で先手良しと言うことだ。その時、△8四の歩が突いていないのが大きく(△8五歩なら△8四飛と逃げられる)、△5二飛以外、どこへ逃げても△6三金の浮き駒を狙われ、後手が大変らしい。(BS解説)
そこで、森内竜王は、△5五銀とかわした。以下▲5六銀△4六銀▲4五桂と進み、さらに、△4四銀に2筋を切って、横歩を取る。

▲3四飛と横歩を取ると、△3三歩で飛車は死ぬが、これには、▲4四飛△同歩▲2二歩△同金(▲2二歩が入るかどうかは微妙)▲7一銀とまたもこの銀の攻め筋が出てきて、これは先手やれるという(BS解説)。

結局、森内竜王は、△9五歩▲同歩と端に味を付けた後、△3三桂と守った。なんとも柔らかい受けだが、先手にしてみれば、飛車を追われないなら(攻め合いになるなら)、かなりやれそうにも見える。

午後6時夕食休憩前の▲4七歩(左図)もタイミング良く銀の動向を聞いた手で、先手がうまく仕掛けたようにも思える。両者の持ち味が出て、熱戦になりそうな終盤戦へ突入した。
(5月13日午後6時40分記)
午後9時54分、後手の森内竜王が投了。これで羽生名人の1勝2敗となった。


上図△3七銀不成の後の、▲6五歩が、「なるほど、ここが急所か!」と言う手。確かに、△6四の金が上ずると△5三の地点が薄くなる(△4四銀は飛車で取ることになるので)。

森内竜王は、端に綾をつけて、駒が入るのを待ったが、▲6二歩のような確実な手があっては、勝負あったというところか。
しかし、△9六桂の王手に、▲9七玉はちょっと驚き。確かに、普通は、上部へ逃げるものなのだが、この場合は、▲7九玉と落ちても、飛車打ちに▲6九歩があり、この底歩がかなり固い。後続の攻めがなければ、下の方が安全なこともある。
もっとも、ここに至っては、すでに読み切りだろう。
最後は、▲7七桂と成桂を取り、▲6五桂打まできれいに決めた。投了図以下は、△6五同金には、▲同桂△4三玉▲5二銀で、どちらへ逃げても金打ちまでの詰み。したがって、図より△4三玉と逃げるしかないが、▲6四飛成と金を取り、この状態で、先手玉は詰まず、後手玉は一手一手で受けがない。


本局は、羽生名人が▲4五銀と攻め始めてから、そのまま攻めきってしまったような印象を受ける。途中で、森内竜王に、特別悪手があったようにも思えないが、もっと頑張る手がなかったのかどうか、週刊将棋が出たら、また追記しておきたいと思う。

しかし、いずれにせよ、千日手模様を打開した、羽生名人の完勝譜と言えそうだ。
(5月14日記)
(週刊将棋を見て)

今回は、実況で見ていた時の感想に、ほとんど追加することがない。
週刊将棋に、『羽生 果敢な姿勢が勝因』と載ったように、▲4五銀からの仕掛け以降、後手がはっきり良くなる手順は、ほとんど出てこなかったらしい。

いくつかコメントを紹介するなら、

『▲8六銀と揺さぶりをかけた。これが地味ながら好手。』

『激流に弱い8四歩型』

『「千日手も少し考えたが、まだ駒がぶつかっていない局面だったので。ハッキリしない部分もあったが、打開するならこの瞬間しかないと思った」(羽生)』

『3手1組の絶妙な攻めで森内陣の急所を突いた。攻守に利いている銀をソッポに追いやりじっと6筋の歩を突き出したのが決め手に。』

『森内の構想を強襲でとがめた羽生。果敢な姿勢が勝因になった。』

この1勝は、内容的に見ても大きな1勝で、七番勝負の行方は全く分からなくなったと言えそうだ。
(5月16日記)

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