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名人戦第4局、速報感想

2004年、第62期名人戦第4局の速報感想です。

名人戦の棋譜速報は有料なため、この感想は、BS放送のあとからのアップとなります。
BSは、第1日目、午前9:00〜10:00、午後6:00〜6:30の放送、第2日目は、午前9:00〜10:00、午後6:00〜6:30、深夜00:15〜00:30の放送予定となっています。
したがって、更新の予定は、1日目は、2回(午前10時、午後6時半過ぎ)、2日目は、2回程度(午前10時、午後6時半過ぎ)となります。
(2004/05/19AM10:30)

この第4局は、先手森内竜王、後手羽生名人、です。

先手、森内竜王の▲7六歩から△3四歩▲2六歩と進み、4手目を注目していた。△4四歩や△5四歩なら振り飛車、△1四歩なら第3局と同じ、△8四歩なら横歩取りと戦型が決まるからだ。しかし、BS放送中に指された手は、△3二金。この手は△1四歩と狙いは同じ後手番1手損戦法だ。これに対し、森内竜王は、▲7八金を決めてから▲2五歩と伸ばす。当然、△8八角成と角を交換するものと思っていたが・・・。

羽生名人は、△8五歩と伸ばした。この瞬間に横歩取りの戦型に戻った。森内竜王が、5手目に▲2五歩と伸ばしていれば、後手番1手損角換わりになった可能性は高いと思うが、▲7八金△8四歩の交換を入れたことでこのような進行になった。

左図は、10時BS放送終了局面。微妙な駆け引きの後、結局は、横歩取り8五飛戦法に落ち着いた。
午前9時15分頃、△3二金が指され、これは後手番1手損戦法になるな、とその資料を捜しに行った。後手番1手損戦法は、去年突然流行し始めた為、単行本などはほとんどないと思う。私自身は、去年の週刊将棋の記事「いま、将棋界の話題」で「後手番1手損戦法は流行するか」と題した記事しか知らない。

私は、まったく指さないので(あまり興味もなかったので)、ほとんどこの内容については知らなかったのだが、流行し始めたのは、去年の6月頃かららしい。但し、この戦型のルーツは、意味合いこそ違うが、大正時代からあったと言う。

後手番1手損戦法の主な出だしは、次の3つ(以下週刊将棋から)

(1)▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩△8八角成の出だし。これがいわゆる正統派の?1手損戦法。

(2)▲7六歩△8四歩▲2六歩△3二金▲7八金△3四歩▲2五歩△8八角成の出だし。先手の作戦を7八金型に限定している意味がある。

(3)▲7六歩△3四歩▲2六歩△1四歩▲2五歩△8八角成の出だし。後手は△3二金と上がっていないので、先手の対応によっては振り飛車にできる利点がある。

10分程度、この記事を読み、ポイントを書こうとしていたら、羽生名人は、△8五歩を突き、横歩取りに進んだ。序盤のこの微妙な駆け引きが今後どのような展開を生むか。名人位の行方を左右する第4局が始まった。
(5月19日午前10時30分記)
左図は、1日目終了局面。横歩取り8五飛から最新定跡通りに進んでいる。

この局面は、つい最近見た、という人も多いと思うが、先日の日曜日に放送されたNHK杯の北島(先手)−渡辺戦そのままである。私自身は、このNHK杯を詳しく見ていなかったのだが、この戦いでは、以下▲4五飛△5七桂成▲同銀△4五飛▲4六銀△6五飛▲7七角△7五歩▲5七桂△6四飛▲3五桂△7六歩▲5五角△7七歩成 ▲同桂△7六歩▲6五桂左△7七歩成▲同角△7四飛に▲7九歩と打ち、△4四歩と突かれて先手が苦しくなったという風な解説を記憶している。▲7九歩では、一旦▲7五歩と打って、△同飛なら▲7九歩でどうだったか、ということだったと思う。

もっとも、途中の変化は、ずいぶんいろいろありそうで、この実戦通りに進む可能性は少なそうだ。
BSの解説は、井上八段。1日目終了局面の4手前▲2三歩は、「きわどい利かし」との説明から、そこで△5七桂成ならどうかという話をしていた。つまり、▲2三歩に手抜きで、先に△5七桂左成とするのは、▲6九玉と下がられ、それから△2三金と取るのは、▲4三飛成が残ってしまう。また△5七桂右成は、同じように▲6九玉とされ、△2三金に▲5八歩と打たれ桂が助からない(△6七成桂▲同金△8七飛成は▲7八銀)。
そこで、桂成をせずに単に△2三金とし、▲6八銀と進む。ここ▲6八銀では▲2四歩も魅力だが、ここで打つのは、△3四金▲2二角成△5七桂右成とされ、△6九玉に△3五金と出るのが好手で、これは後手良しとの研究があると言う(先手が歩切れで▲5八歩の受けが利かない)。

ここまでは、少ないものの実戦例がまだあり、当然、研究範囲でもあるだろう。明日は、どちらが、どのような研究手を出すか。本格的な勝負は、明日に持ち越された。
(5月19日午後6時50分記)
2日目、封じ手は、ほぼ予想通りの▲4五飛。以下△5七桂成▲同銀△4五飛までは必然。

この局面を見ると、飛車と桂2枚の交換で、通常なら飛車を持った方が得だ。特に、振り飛車対居飛車の戦いなら文句なく(飛車を持った方が)有利なのだが、本譜のような横歩取りで、桂の使い場所が多いところでは、必ずしもそうとは言えず、結局、この局面も良い勝負と思われているようだ。

そして、森内竜王は▲3六桂と打った。新手らしく、解説の井上八段は、「初めて見た手」と言っていた。そして、この手の感想を聞かれて「第一感は・・・」で詰まっていたが、その後の言葉をあえて言い表すなら、「狙っている角は、すぐに切られるので、ちょっと損な手に見える」と言った感じか。
と言っても、森内竜王が、実際にここでこの手を用意してきたと言うことは、相当の研究に裏打ちされていることは間違いない。一見、△5七角成と切られ、▲3六の桂が空を切るようだが、▲2四歩と後手の攻めをせかしたり、角や桂で4五の飛車をいじめる狙いもあり、この後の変化をいろいろ解説していたところでは、後手の対応も難しそうだ。

もっとも、▲3六桂が新手とは言え、第2局のような研究がなければ思いつかないような手ではない(むしろアマチュアなら最初に目が行く)ので、この手一発で終わるような展開にはならないと思う。羽生名人も読みの中に入っていたであろうし、今期初めて名人戦らしいねじり合いが期待できるかもしれない。
(5月20日午前10時20分記)
午後6時、左図は、夕食休憩までの局面。上図から10手しか進んでいないが、この数手は、まさに名人戦らしい、重みのある一手一手だ。

特に△6九飛を決めてからの△2六歩!には驚き。△6九飛は急襲、△2六歩はゆっくりした手のように感じ、このアンバランス故に、なかなか思いつきそうもない手順だからだ。そして、これに対する森内竜王の手にも驚いた。▲2四歩と打ち、△2七歩成を誘ってからの▲5八玉!単に▲5八玉なら一目だが、と金を作らせてから引くとは!
この読みの入った終盤戦、果たしてどちらが読み勝っているのだろうか?

BSでは井上八段と富岡八段が来て解説していたが、なかなか難解。しかし、富岡八段の感想では、森内竜王が、僅かに残しているのでは、とのことだ。
この局面後の井上−富岡解説の一例を挙げれば、△3八と▲6九玉△4七飛成(ここまではほぼ必然)。そこで、▲5五角か▲6八金。▲5五角には△4九龍▲6八玉△6九銀▲7七玉△7八銀成▲同玉△5八龍▲6八銀。▲6八金だと、△4九龍▲7八玉に△8六歩。

いずれの変化も相当難解だが、確かに先手が僅かに残しているようにも見える。羽生名人しか思いつかないような寄せで、2勝2敗の五分に戻せるかどうか。最後の勝負所だ。
(5月20日午後6時50分記)
103手で羽生名人投了。これで森内竜王の3勝1敗となり、名人奪取に王手をかけた。

しかし、ものすごい終盤戦になった。6時のBSが終わった後、少しずつ後手が足りないのかな、と思っていたが、上図より、羽生名人は、△4九飛成!と切り△3四金と手を戻した。これは、普通なら考えもしない手だ。と言うのも、これでは、せっかく当たりになっている銀に逃げられてしまうからだ。

ところが、この粘りが最善なのかもしれない。実際、この後は、どちらが優勢なのか分からないような戦いが続いた。

左図の△2一金が頑強な抵抗。▲1三龍△1二金▲1六龍△2六歩の後、△1五歩の龍取りが残り、先手もゆっくりできない局面になった。

実際、どうやって攻めるのだろう?先手を持って勝ちが良く見えない、と思っていたが、さすがに絶好調の森内竜王、▲3三歩から▲4六歩という手順をひねり出す。これにどう応じても、手がつながりそうで、まさに、一手指した方が良く見える局面。

左図の▲3一角成と成って、これはさすがに決まったな、と思っていたら、羽生名人は、なんと△同玉!。 ▲1二龍が見えているので、真っ先に読みから外しそうだが、逃げるのでは▲5五角が幸便で勝負にならない。▲1二龍に△3三金で、3六の飛車まで受けに利いてきて、実際、まだ難しい。

最終盤、△6五桂と打った時は、一瞬逆転したのかとさえ思ったが・・・。これが詰めろになっていなかったらしい。
最後は、もしかしたら逆転の可能性もあったかもしれないが、▲4三龍以下は即詰みとなった。左図が投了図。

投了図以下、△4三歩と合駒するのは、▲4二飛成△同玉▲3三金△5一玉▲5二銀△同玉▲4三角成△5一玉▲4二金まで。▲3三金や▲5二銀を打たせない為、4三へ金や銀を合駒すると、今度は、▲同角成と切り、▲4四銀△5二玉に▲4二飛成と切られ、まだ持ち駒に金銀二枚あるため、並べ詰みとなる。

深夜のBS解説では、(局後の感想では)△6五桂と打ったところで△1四角ならどうだったか、との検討がなされたらしい。また、森内竜王の感想に、「▲5五角と取るのでは、負けにしたかもしれない」とも。

それにしても見応えのある終盤戦だった。羽生名人が負け、星が片寄ってしまったのは残念だが、面白い終盤で、今度の週刊将棋が楽しみになった。
(5月21日記)
(週刊将棋を見て)

まず、新手の▲3六桂周辺について。

『本局では▲3六桂が温めていた桂打ちだった。「一度試してみたかった」(森内)』とのことだ。そして、△5七角成▲同玉の後の手については、[杉本の目]として『△6九飛が有力。▲7九桂なら△2七銀と絡んで攻めが続く。▲2四歩の攻め合いは以下△8九飛成▲2三歩成△7八龍▲3三歩成と進展。この変化は難しいものの後手が勝ちづらいかも。』

深夜のBS解説でやっていた△1四角について。

『86手目の△6五桂が惜しまれた。ここでは△1四角が勝負手だった。先手は両王手の筋があるために迂闊に手を出すことができない。またあらかじめ▲5七玉とかわすのは△3五飛▲4五香△6五桂▲6六玉△4七角成で後手勝勢だ。感想戦の最後で△1四角には▲4七銀が正しい受け方と判明。以下△3九飛成▲3六香でわずかに先手が残していたようだが、実戦ならどう転んだが分からなかった。』

結局、もっとも面白かった終盤について、それほど詳細な解説はなかった。というより、感想戦でも、難しく、結論は出なかったらしい。週刊将棋には、『妙技を繰り出していた羽生本人が局面を必要以上に悲観していた。』とあり、『真理を求めたその場の結論は勝敗不明、現実の勝負は気持ちが明暗を分けた。』とだけ書かれていた。
(5月23日記)

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