ホームへ戻る/速報感想表紙へ

第44期王位戦第1局、速報感想

ここでは、2003年、第44期王位戦第1局の速報感想を書いていきます。棋譜の速報は、トップページからリンク先へ。
このページの更新予定は、1日目(7月15日)は、2回(正午、午後6時過ぎ)、2日目(16日)は、随時(但し数回)載せて行くつもりです。(2003/07/15PM12:00)


谷川王位対羽生四冠の王位戦が始まった。この第1局は、先手羽生四冠、後手谷川王位となっている。

さて、図はお昼頃の局面。今回の出だしは、非常に面白い。ここまでの手順を、自分の想像も入れて、級位者向けに解説しよう。

先手の羽生四冠が、3手目▲6六歩と振り飛車を明示する。谷川王位、まさか、先手で振り飛車はないと思っていたのに、▲6六歩に驚き、長考。しかし、最近、週刊将棋でも、羽生四冠が、相振りに興味があると話していることを思い出し、ならば、ファンサービスに振ってみようか、と△3三角から2二飛。

これに対し、▲4八銀が、相振り戦(模様)に羽生四冠が暖めていた趣向(新手と言う訳ではない)。普通なら、▲6七銀▲7七角から▲8八飛(これが最も多い)、あるいは▲7八飛や▲6八飛と先に飛車を振るもの。

▲4八銀の狙いは、▲3六歩から▲3七銀とし、その後、飛車を振ることで、相振りでは、玉の囲いの理想形である矢倉にすると言う意味がある。但し、早期に矢倉の意志表示をすれば、それなりの対応も後手は出来る。

▲4八銀に対し、矢倉を拒否するため、△3五歩と突く手は考えられそうだが、3筋に飛車がいないのに△3五歩は伸びすぎになりそうだ。先手も飛車を振らずに3五歩を狙いに行き、乱戦になるだろう。

谷川王位は、すぐには動かず、△7二銀と美濃囲いへ。相振りは、金無双が最も普通の囲い(相振り飛車戦法参照)。私自信、相振りを指す時は、金無双が多いが、それは、美濃の場合、三間に振られても、向かい飛車でも損だと考えるから。特に向かい飛車の場合、たった二歩の持ち駒でも▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四歩の攻めがある(実際は、これに桂香が入ることが多い)。むろん、金無双には金無双の弱点もあるが。
しかし、それでも美濃にしたのには、▲6八玉から▲7八玉とし、▲4六銀から居飛車の急戦で動かれることを心配したのではないか(これは私の想像)。その場合は、むろん美濃の方が断然良い。

一方、仮に飛車を振られても、金無双と美濃の差は、僅か(美濃が勝る場合もある)で、実際には、ここから矢倉への展開も望める。

非常に面白いやり取りの後、どのような展開になっていくか。羽生四冠が、振れば、先手の矢倉にどのような攻めを築くかがポイントになり、先手が居飛車なら(美濃なのでその可能性は低い)、急戦に対し、後手がどのように受けるかがポイントになる。

(7月15日午後12時30分記)
午後6時、1日目終了局面。

上図より、▲8六歩から▲8五歩とし、羽生四冠は、明確に振り飛車を意思表示。しかし、次の▲6五歩!は、驚きだ。後手は、まがりなりにも玉が入場しているのに、先手はまだ居玉。▲6五歩は積極的な手だが、角交換を狙われ、乱戦になる可能性を残してしまうし、そうなると、居玉の先手はまずい。相当読みを入れなければ指せない一手と言える。

谷川王位の△4五歩は、そう言う意味では自然な一手。先手はまだ、矢倉を構築させる手が必要なのに比べ、後手は、すでに美濃の中(8二玉はかえって当たりがきつくなる場合もあるので、このまま戦いに入ることも予想される)。

今日の最終手△3二飛!この手は、▲6五歩以上に驚きの一手だ。もちろん△4五歩からの継続手ではあるのだが。

なぜ、△3二飛が驚きの一手かと言うと・・・。

相振りの場合、向かい飛車対三間飛車という構図が多い。そして、その時、角交換を迫るのは、たいてい向かい飛車側だ。三間飛車は、(すぐにではなくても)角の打ち込み場所が多く、駒組みに制約をきたすので、普通は角交換を拒否する。

つまり、図から▲3三角成△同桂となった場合、後手には、▲4一角や▲2一角。さらに△2五桂にヒモを付ける△2四歩などを指した場合、▲2三角もある。もちろん、これらの手は、すぐに打つと、角が死ぬが、攻めるために、△4三銀などが動いた場合に、常に生じる筋なのである。だから、普通、三間飛車側は、角交換を拒否するか、角交換した後、向かい飛車に振り戻すのである。

ところが、谷川王位は、角交換をいつでもできるこの状態で、三間へ振り直したのだ!もし、ここまでの手順を知らないで、この局面だけ見せられたら、後手が△2二飛と振り直しても、何の違和感もないだろうと思う。それだけ、相振りを良くやっている人にとっては、(たぶん)不思議な一手なのである。

しかし、こうなった以上、先手が受け、後手が攻める展開になると思う。先手が矢倉にガッチリ組み、角をどこかに打って馬を作る展開になれば、先手良し、それまでに攻めのポイントを奪えれば、後手良しと言うことになるのだろう。

相振り飛車を絶対指さない居飛車党にとっては、分かりづらい将棋かもしれないが、純粋振り飛車党にとっては、この王位戦、最初から一手一手が非常に面白い将棋になっている。

(7月15日午後6時20分記)
2日目が始まった。左図は、午前11時頃の局面。

封じ手の▲3三角成は、後手が替えてこいと言っているところなので、ちょっと驚いたが、次の▲7七角を見れば、その意図は明らか。
後手の攻め駒ににらみを利かし、簡単には動けないでしょう、と言っている訳だ。で、先手には、玉を固めるなどやりたい手がたくさんある。対して、後手の囲いは、あまり発展性がない。
△4三金から△6二飛は苦肉の策だが、▲6八飛と受けられるとやはり動けない。

結局、△8四歩から銀冠に構えたが、ここの数手と、▲4八玉から先手が囲いに費やす数手では、先手の方が得だろう。
後手の主張は、持ち駒に角を持っていることで、先手が動いた瞬間を狙って反撃したい。とはいえ、ここまでは、羽生四冠の▲4八銀から▲6五歩と言う強気の趣向が功を奏し、局面をリードしている感じだ。

(7月16日午前11時20分記)
2日目お昼(12時30分)までの局面。

羽生四冠の▲4八金直では、▲2八玉から▲3八金とするかで迷うところだが、(▲2八玉だと)△2五桂に▲2六銀しかなく、玉のこびんが開くのが不満だ。

▲6六角も積極的な一手。▲8八飛から▲8四角の狙いがあり(但し、すぐに切ると、△4四角があり、▲7七桂を跳ねてからでも△6六角があるのですぐには決行できないが)、後手との間合いを計っている。

今、谷川王位が、△1二飛とまわり、△1五歩の攻撃を見せたところだが、これもすぐにはなかなか行けない。普通は、攻めの香と守りの香との交換は、攻めてる方が得だが(矢倉でも相振りでも)、この局面では、香を持つと、▲4四香や▲8七香があり、必ずしも、後手が得とは言えないようだ。
依然、微差ながら、先手が主導権を握っていると思う。
(16日午後12時50分記)
2日目午後3時30分頃の局面。

先手が▲7七桂や▲8八飛と戦闘態勢を整えている間に、△4二飛と振り戻すくらいでは、かなり先手良しかと思っていたが、△8二角!が強い受け。どうしても、8四の地点に目が行ってしまうため、(受けるとすると)△6二角のような軟弱な手が浮かんでしまうが、それだと本当にじり貧になりそう。
△8二角は、▲8四角なら△同銀▲同飛に△2八角成から△7三角の王手飛車(又は単に△7三角打)があると言う訳だ。

▲7五歩の交換のため、▲6七金と上がったのが、かなり味が悪い。3、4筋が薄くなったため、相当うまく攻めないと、反撃が厳しそうだ。
後手が盛り返し、難しくなったと思う。
(16日午後3時40分記)
2日目午後5時30分頃の局面。

上図より、△4六歩▲同歩に△6五歩!が谷川王位らしい一手。駒を呼び込んで相当に恐いが、桂交換後の、▲7五桂をくっても、△5四桂で勝負になるとの読み。壮絶な斬り合いになった。

羽生四冠の▲3七銀も△2五桂が見えるだけに(すぐ跳ねるのは、▲6三桂成から▲3三銀)、負けると敗着になりそうな一手だが、これも微妙な間合い。
そして、△3五歩▲同歩△3六歩▲同銀と形を乱しておいてから、△7四銀右!
絶妙の手渡しで、△8二角に続く好手だと思う。こういう一手を実況で見られるだけでもうれしい。
とは言え、依然難解で、形勢不明の戦いが続く。
(16日午後5時40分記)
2日目午後7時前の局面。

一手指した方がよく見える、非常に難解な終盤戦になった。
上図より、▲6四歩△同金を利かせ、どう攻めるのかと思っていたら、▲3四歩△同金に▲2三銀!コンピュータが指すような手だが、これが非常に厳しい。△4四金は▲3四歩(あるいは▲3二銀成?)が厳しいので、先手良さそうと思っていたら、△8五桂の返し技。

さらに、△5九角と打ったところでは、単に△4八角成から△3八金で精算するのでは、後手足りないと思っていたのだが、今度は、△5五金!さすがにこの二人の戦いは、すごいの一言。

駒が入ると、▲5三桂成からの寄りつきがあるので、僅かに先手が残しているようにも見えるのだが・・・。
(16日午後7時10分記)
  134手で谷川王位の勝ち。左図が投了図。

最終盤に入ってさえ、どちらが勝っているか分からない、すばらしい戦いだった。

あまりに難解なので、週刊将棋を見て、その結果をまた追記しておきたいと思う。


(16日午後8時記)
(週刊将棋を見ての追記)

結論から先に言うと、検討しても分からない程、難解な終盤戦だったらしい。

週刊将棋に書かれているポイントは二つ。

一つ目は、84手目の△3五歩の局面。以下抜粋。

『難解な形勢で迎えた第1図(84手目)。谷川が歩を突き出したところ。実戦は▲3五同歩△3六歩▲同銀△7四銀右と進み、後手ペースに。30分の考慮で指された▲3五同歩。しかし羽生は「歩を取ってからはまずいような・・・」という。▲3六同銀に△7四銀右と中央を厚くされ「困ったですね」(羽生)第1図では▲6四歩△同銀▲6三歩△5二玉▲8三桂成△同金▲2二銀の順が検討された。』

とあり、この後、手順が示され、この検討された順なら難解な形勢だったという。(それでも難解と言うのがなんとも・・・)

ポイント二つ目は、最終盤の『水面下に潜む数々の変化』と言うことでいろいろ書かれていた。

95手目の▲2三銀には△8五桂がピッタリで、谷川王位は、優勢を意識したらしいが、実際には、両者が思っているほど、明快ではなかったという。さらに、121手目▲5三桂成からの変化が膨大で難解だった。
122手目の▲6二金に逃げる変化は、妙手順の詰みがあり、「この筋が見えたので負けにしたかと・・・」と谷川王位は言っている。さらに、126手目△同飛が普通だが、それには、▲8二金と言う妙手があり、△同飛、△同玉ともに王手龍がかかる。この辺りの細かい変化も週刊将棋には載っているが、それでも載せきれない変化が多数あるくらい複雑だった。

で、(以下抜粋)
『第3図(122手目)からの▲6二金を羽生は「敗着です」という。▲4七銀と歩を払い、△5七銀に▲6二金△同角▲同成桂△同飛▲7二歩△同玉▲3六角△5四歩に▲4九金で「勝てるかどうかは分からないが大変」(羽生)だった。』

とあり、結局、最後は、ぎりぎり詰まなかったので、(結果として)▲6二金が敗着といえるだけで、最高峰の二人でさえ、分からなかったほど、超難解な終盤戦だっということだと思う。

(7月20日記)

ホームへ戻る/速報感想表紙へ