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将棋に関するミニ感想

2004年8月
8月18日(水)   東大将棋対鈴木八段の飛車落ち戦
2004年8月、週刊将棋でソフト3強対鈴木大介A級八段の指し込みという面白い企画が始まった。これは、飛車落ちの3面指しから始まって、ソフトが勝つと次は角落ちに、負けると二枚落ちになるというもの。ソフト3強とは、IS将棋(以下東大将棋)、YSS(以下AI将棋)と激指の三つである。そして、8月18日号には、最初の飛車落ち3局が載せられていて、結果は、鈴木八段の2勝1敗。AI将棋と激指は負けたが、なんと東大将棋は飛車落ちで勝利したのだ。

現在のソフトはどれも非常に強い。ソフトの事を何も知らないで指せば、道場の四段ではなかなか勝てないだろう。ただ、反面、ソフト故の弱点もある。そのことを良く知っていれば、二段、三段でも十分勝てる見込みはある。

この企画が始まる前、私は次のように考えていた。つまり、飛車落ちの勝敗は、鈴木八段がソフトのことをどの程度知っているかにかかっていると。

対戦前に、何度もソフトと指し、その癖を知り尽くしていれば、飛車落ちは3局とも楽勝、二枚落ちでも2勝1敗、場合によると3連勝してしまうのではないかと。

ただ、そこまで癖を知っていなくても、序盤が弱く終盤はアマ四、五段並みにあるということを聞いていれば、(終盤油断せずに)飛車落ちは勝ち越すだろう(場合によれば全勝)と思っていた。

そして、反対にまったくソフトのことを知らなければ、飛車落ち全敗すら考えられると思っていたが・・・。

東大将棋対鈴木八段の飛車落ち戦の再現
(別ウインドウにミニ盤が出ます)

結果は、先ほど書いたように鈴木八段から見て2勝1敗。その指し口を見ると、ソフトのことをそれほど良くは知らないことがうかがえる(もしくは知っていたとしてもその弱点を突かない指し方をしていた)。


どういうことかと言うと、ソフトの検証で散々言っているように、ソフトの序盤から中盤は初段以下であり、終盤に入ると突如四、五段に変身すると言うことである。

左図は、東大将棋との一戦。上手の鈴木八段は、初手△3四歩から角道を止め、△3二金と上がる。これは、まったく普通の飛車落ち定跡の上手の指し方である。

この指し方にまったく問題はない。そう、人間相手なら。

しかし、もし私がソフト相手に本気で勝ちに行くときは、こうは指さない。私がソフトと駒落ちを指す時は、初手△3二金か△5二玉、あるいは△6二玉と”ずるく”指すのである。


そうすると、その時々で、ソフトはいろいろな駒組みをするが、なぜかうまい駒組みをしない。

たとえば、左図。私と東大7との飛車落ちで、初手△3二金だ。三間に振って浮き飛車にしたが、すでに(三段差以上あると)下手の勝ちづらい局面。

もし、将棋センターの指導対局でこの局面になってしまったら、ここからどうやって熱戦に持って行こうか悩んでしまう局面だ。

しかし、ソフトはここからが強い。ここまでは初段が相手で、ここから四、五段が相手になると考えなければ勝ちきることはできない。

(定跡から外れた後の)序中盤があまりにヘタなので、(終盤も弱いだろうと)あまり読まずに攻めると、頑強な受けと、鋭い攻めにあい、プロでも危ないだろう。


だが、鈴木八段は、知ってか知らずか(たぶんそこまでソフトに詳しくはないと思うが)、普通に定跡通り進めた。

そして、4筋で銀交換後、東大将棋は、▲5四銀!と打った。うまい!4五の歩を守る為には、△3三桂しかなく(△4六銀は▲3六歩の銀バサミ)、この銀は容易に死なない。

そして、自玉の側なので突きづらいが、平然と▲5六歩も厳しい。さらに桂まで活用し、下手十分の駒組みである。

38手目、「東大将棋7の追記」でも触れたが、▲5五角の強手が飛び出し、さらに、▲3三桂成から角を切って飛車をさばく。


左図を見て欲しい。角桂と金銀交換で、駒割り的にはまあまあだが、飛車をさばいているのが大きい。

下手大成功の図で、私が将棋センターで初めて来店した人に棋力を確かめる意味での指導対局なら、この後数十手指し投了後、「いや、▲5五角が良い手でしたね。(二段か三段と言ってきた人に)二段ということはありませんよ。三段でも強い方か、四段でもやっていけると思いますよ。」と言うところだ。

ではソフト相手にこの局面になったらどうするか。それは、直ちに投了ボタンを押し、もう一局となるのである。ここから先は、四、五段相手なので、ほぼ絶対と言っていいほど勝てないからだ。

しかし、鈴木八段は、さすが、プロのA級である。3面指しにもかかわらず、この後、ものすごい追い上げを見せる。

その第一弾が、△5二銀。そして、
△6五角!から△5六角と歩を取り、△4一歩と打つ。ソフトもすでにアマ五段にバトンタッチしている。▲5三歩から▲5四歩と手筋の叩き。対して△3一歩と手筋のお返し。▲同龍なら△6四馬で歩が成れないので▲3五龍と引きつける。NHKの将棋対局を見ているような攻防だ。


72手目の何気ない▲7七桂に鈴木八段は端が薄くなったと△9五歩。しかし図の▲6六桂を見て、「なるほど、これはいっぱい食いました。」と。

つまり金が動くと、▲6五銀が厳しい。と言って、金をやる訳にもいかないので△4四金(本当は△5三金と引きたいが、▲6五桂が当たってしまう)▲6五銀△同角▲同桂と進む。

そして、△8四香と玉頭戦に最後の望みをかけたが、▲3三角が非常に厳しい。△4四の金取りを防ぐと、▲5一角成でこちらが受からない。

そこで、△9六歩から△8六桂!、△9七歩、△9八桂成!と攻め込む。

受ける方も、ちょっとでも間違うと、たちまち逆転である。しかし、「ソフトが指すタイトル戦最終盤」でも検証したように、詰むかどうかのソフトの指し手は、ほぼ完全に正確だ。90手目の▲5四桂が詰めろ逃れの詰めろで、プロの指導対局を受けていたとしたら、ようやく勝てたと思う瞬間である(▲6二馬△8二玉▲7二金△9二玉▲9三銀△同玉▲7一馬。又▲7三桂成と龍の横利きを通す手も残しており受けも難しい)。


しかし、△8二玉の早逃げから△9三玉。さらに△8七香成から△8四玉!△9五玉!

A級八段相手にこんな風に粘られたら、間違いなく焦って悪手を指してしまうに違いない。

しかし、ソフトは焦らない、相手がA級八段でも(^^;;

▲7五金から▲8六歩が落ち着いた好手。上部を止めておいて、じっと▲7三桂成の二手すきで間に合うと言う読みだ。

最後に▲6二角というきれいな必死をかけて、「詰みだけでなく、必死もかけられますよ。」とアピールしてこの将棋をしめた。

それにしても、東大将棋は強い。

でも、本当のことを言うと、この棋譜を見て、「やっぱりA級八段は強い!」と思ったものだ。私なら46手目にさばかれた段階で、投了することは間違いない。しかも、その後、どの局面から上手を持っても、負けてしまいそうだ。

逆に67手目鈴木八段が△6四馬と引き戻したところで、下手を持ってA級八段に勝てるかと言われると、それも自信ない。

今回のソフト3強の飛車落ち戦はどれも熱戦だった。激指は、アクシデントがあり、定跡ファイルを使えなかったらしく、3手目に▲6六角と上がり、いつまで経っても飛車を使おうとしないので(通常、上手が定跡を外すとこのような駒組みをすることが良くある)、一番つらい展開になったが、AI将棋も力を見せて、一時優勢になっている。

私がソフトに駒落ちで勝てたとしても、初手△3二金のような”対ソフト専用の卑怯な手”を使ってようやく、である。したがって、最初の2、30手を駒落ちの定跡通りに進行させ、そこから勝てるかどうかと言われたら、おそらくプロと同じだけの終盤力を持っていないと勝てないのではと思う。

今回の飛車落ち3局を見る限り、苦手な序盤に定跡を使えれば(使えるような展開になれば)、プロトップと、飛車落ちで良い勝負になると言うことが分かった。

そして、次回の週刊将棋は、二枚落ち2局が載る。これはちょっと不思議なところだが、二枚落ちになったからと言って、定跡を使わないと、人間が飛車落ちから二枚落ちになった時のような有利さにならないのがソフトである。また、たまたまソフトのバグみたいなところに入ると、妙におかしな駒組みをして勝ててしまうこともある。

この二枚落ちのポイントは一点、ソフト側が、定跡を使えるような展開に持って行けるかどうか、さらに定跡を外れても、駒の効率を優先する駒組みを出来るかどうかにある。

予想としては、定跡の進行もしくは飛角を働かせる展開に序盤を進めることが出来たとして1勝1敗、もしソフト自らおかしな駒組みをするようだとソフトの2敗となってしまうだろう。

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