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将棋に関するミニ感想

2007年5月
5月17日(木) 将棋世界、先崎八段の文章から

今月初めに発売された将棋世界6月号。送られてきてすぐこの中にある先崎八段の
「千駄ヶ谷市場」を読んでいて、「なるほど!これは面白いアイデア!」と思ったものがある。

将棋世界を読んでいない人もいるだろうし、そのアイデアをこのまま埋もれさせてしまうのはあまりに勿体ないので、実際に出来るかどうかはともかく、ここネット上に残しておきたいと思い、ここに書いておくことにした。

以下、かなり長い文章を無断で引用しているので、ちょっと気にはしているが、純粋に「将棋界のため」ということで関係者には理解して頂きたいと思う。

(まず、付録「全国将棋道場マップ」から将棋道場が思っている以上に少ないという話をし、その後、以下のアイデアの話に移っている:以下すべて抜粋、但し段落は見やすいように、ここでは一行開けている)

若手でも女流でもいいから、数人で、チームを組んで道場を回るのである。これだけならどうということはないが、私が考えたのはここからである。

こうした時に常に問題になるのが、棋士へのギャラである。我々棋士は霞を食べて生きているわけではないので、これは大事な問題だ。正規の(何が正規かは難しいので、まあ一般的な、ということで)ギャラではとても棋士を呼ぶだけの余力はない、というところが多いだろう。

そこで、指導料を大幅に値下げする。一局千円、ということでどうだろう。千五百円にして、五百円はチャリティに回してもいい。

普通、我々棋士にはこうした仕事の時は、道場の席主さん、あるいは支部ならば支部長さんなどに、封筒でまとまったギャラを頂くわけなのだが、そうではなく、とにかく一局千円を、これからプロと指すという人にその場で払って頂くのである。

はっきりいって、これは棋士にとってかなりのダンピングである。通常の仕事と思うとちょっと辛いかもしれない。

そこで、棋士は服装もスーツなどではなく普段着、将棋も時計などを使い一局が早く終わるようにする。終局後の感想戦もそれほど丁寧なものではなくても許してほしい。
きっちりとした指導対局は師範の棋士におまかせして、にぎやかしのようなものだと思っていただければよい。

私がこの発想を得たのは、最近都会に多い千円カットできる床屋からである。千円でカードを買えばぱっと髪を切ってくれる。もちろん、値段の高い街の床屋さんに比べると腕のほうはどうかと思う時もある。数千円する街の、丁寧にひげまでしっかり剃ってくれる床屋と、千円のインスタント床屋、どちらがいいかはもちろんそれぞれだが、選択できるということ自体が素晴らしい。

将棋界においても、棋士の先生にかしこまって教わるのが好きというファンもいれば、一局千円で軽い感じで教わるのが好きというファンも多いと思うのである。

つらつらこんなことを考えていたのだが、いざ実行しようとなった時に壁になるのが、連絡などの事務をどうするかということである。棋士個人でやるのはちょっとキツイ。だいたいにおいて、棋士は事務に向いていないのである。

将棋連盟というものはもちろんある。しかし、我が連盟は、全国に支部があり、どうしてもはなしが大きくなり、必然、ややこしくなる。ちょっと首都圏の道場に−−というわけにはなかなかいかない。

やる気のある棋士は多い。しかし、そのやる気がひとつの形になかなかならないのが現状だろう。そういう意味でも直近の将棋界の課題は、小回りのよさと、ささやかな実行力、そして何より棋士が向いていない事務能力を将棋連盟という大きな組織以外に持つことではないか、と思う。

(以下、一人一教として、将棋ファンの増やし方を面白く書かれているが、棋士派遣のアイデアについてはここまでなので以下は省略したい)


この先崎八段の文章を読んだ時、たいへん感心し、面白いと思った。
今、たとえば、プロ棋士を呼ぼうとした時、正規の金額は、この「将棋連盟のサイトの棋士派遣」のページに載っている。
ここから平均的な六段の棋士を3時間程度臨時に呼びたいと思った時、6万3000円かかる。将棋センターの席料が一日一人1000円なので、63人分である。
これでは、検討すらしない将棋センターが大部分だと思う。

全国将棋道場ガイドブックを見ると、うちと同じように、土日しか営業していない所も多い。これは単純に平日では人が集まらないという理由がほとんどだろう。
(都内などを除けば)仮に、土日に30人集まるような所でも、平日だとその三分の一から五分の一以下しか集まらないのが普通だ。つまり、土日に10〜20人程度の所では、平日3人〜6人となり、開いている意味すらなくなると言う訳だ。
このような所が、上の正規の値段でプロ棋士を呼ぶことはなかなかできない。

しかし、この先崎八段のアイデア。これは実現できれば、土日営業だけの小さな将棋センターでも十分享受することが出来ると思う。

棋士は遊び感覚で来てくれるだけでいい。そこで、二面から三面で将棋を指す。お客の方にだけ一手60秒にすれば、約1時間で終わる。
仮に三面で、1時間3局こなせれば、5時間で15人。一人1000円とすれば15000円だ。これくらいなら、指したいという人は、うちのような小さな所でも集められるだろう。交通費くらいは、将棋センターで持ってもたいした額ではない。

もちろん上の6万3000円に比べたら、(良くは知らないが、この中から連盟にいくらか取られるとしても)確かに先崎八段の言うようにダンピングには違いない。
しかし、普通のアルバイトだと思えば悪い額ではないと思う。ラフな格好で、遊びのつもりで来られるわけだし。

最後にこのアイデアのメリットを箇条書きに述べておきたい。

(1)将棋センターにとって・・・・・特に余分な出費がほとんどなくプロ棋士を呼び、お客を集めることが出来る。良い宣伝になるし、これを契機に他の日にも来店客が増えることは十分有り得る。

(2)お客様にとって・・・・・プロ棋士と指せる機会というのは一般の人にとってそうある訳ではない。早指しであっても、感想戦がほとんどなくても、一局1000円から1500円程度なら指したいと言う人は多いと思う。

(3)派遣されるプロ棋士にとって・・・・・対局の合間の気晴らしに遊びに行く感覚で、小遣い稼ぎが出来る。さらに、そこで15人と指せば、少なくともその人達やそこで見ていた人達は、そのプロ棋士のファンになることは間違いない。NHKに出場した時には、みんなが応援することになる。

(4)将棋連盟にとって・・・・・直接お金が入ってくる訳ではないし、もしかしたら指導対局のパイが食われる、なんて考えを起こす人がいるかもしれない。しかし、その心配は無用だろう。元々この案は、今まで何もなかった需要を掘り起こしているだけだから。
最終的に、将棋界が活性化すれば、トータルで見たときに連盟にとってもプラスになるはずである。


そう、将棋界にとって一番大切なことは、今そこにあるお金を分けることではないだろう。長い目で見て、将棋というものをより広く深く普及させることにあるはずだ。

そう言う意味からもこのアイデアの実現を一考してもらいたいと思うものである。

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