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その他の格言

では最後に、一つ一つの駒とは関係ない格言を紹介しましょう。ここは、駒の扱い方ではありませんが、将棋を指す上で、心得て置いて損のない格言があります。

長い詰みより短い必死

図面
左の局面、先手を持ってあなたならどう指しますか?
この局面、後手玉には詰みがあります。でも、▲1一銀と打っても必死で勝ちです。
詰みは、▲4二とから追いかけていき、13手です。(4二と・2二玉・3二と・1三玉・2二銀・2四玉・2五銀・同玉・2六歩・3五玉・3六金・2四玉・2五金まで)
級位者にとっては長いこの詰みを読み切るより、一手の必死をかけた方がいいですよ、とこの格言は言っています。確かに長い詰みは、読み抜けがあったら大変。格言そのものは実戦的かもしれません。でも、必死だと思って打ったら、必死ではなく、絶妙の受けがあった、なんてこともあります。詰みなら、読み切れれば絶対に勝ちです。
私は短い必死より長い詰みを選ぶ方ですが(もちろん確実に読み切ってですけど)、さてあなたはどちらを選びますか?

終盤は駒の損得より速度

玉が詰むかどうか、その局面になっているのに、駒得を計る、そうしたことを戒める格言です。
しかし、私の経験から言えば、初心者の人ほど、駒の損得に鈍感です。初段くらいになって、終盤は駒の損得より速度だと言って、駒を捨てて攻める人がいますが、逆に駒を渡しすぎて、詰まされてしまうと言ったこともよく見ます。
あくまで、玉の寄せをみながら、でも駒はあまり損をしないように。

風邪を引いても後手ひくな

先手を取ることの大切さを言っています。
たとえば、大駒で王手をされた時、単に受けるだけでは、また追撃の手が来ます。もし当て返せるのなら、飛車や角に当てて(要するに受けながら飛車取りや角取りにする)、先手を取ることが大切だと言うことです。

寄せは俗手で

俗手とは、金とか銀とかべたっと打っていくような、ダサイ手です。
相手が思いもかけないような妙手を放つと気分のいいものですが、寄せは、案外俗手の方がいいことが多いのです。妙手というのは、決まらなかったら、逆転の余地が生じます。でも、俗手と言うのは、重い手であるがゆえ、多少失敗しても、後続の手があったり、また、受けるのもかえって大変だったりするのです。

逃げ道に捨て駒

図面
左の局面、と金ができるからと、あわてて▲6三歩成としてはいけません。もちろんこの手も実戦では大きな手ですが、△8二玉と逃げられてしまいます。
ここは、▲9三銀(金でも可)が、この格言に添った妙手です。△同香でも△同桂でも、今度は▲6三歩成以下詰んでしまいます。
逃げ道に捨て駒の威力ですね。

敵の打ちたい所に打て/敵の急所は自分の急所

図面
この図は、質問掲示板にここで下手(手前)が、どう指したら良いか質問された飛香落ちの局面です。
ここでは、▲6二金など攻める手もあるのですが、上手からの△5六歩が厳しい攻めです。そこで、こちらからも▲5六歩と打つのが、受けの急所になります。
このように、相手も自分も大事な場所と言うのが、将棋を指していると時々出現します。
こういう急所を逃さないようにしましょう。

端に手あり/浮き駒に手あり

攻める時は、相手の浮き駒がある瞬間と言うのは、チャンスなのですね。なぜかと言うと、大駒交換した場合など、たとえば敵陣に打った飛車がその浮き駒の取りになっていたりして先手を取れることが多いからです。
また、端に手ありというのは、特に矢倉などの場合、端をからめて攻めることで、攻めの幅が大幅に広がるのです。
攻める時は、相手に浮き駒があるかどうか、また端をからめて攻めることができないかどうか、常に考えることが必要です。

位を取ったら位の確保

図面
位とは、▲7五歩のように、五段目に歩を伸ばすことを言います。こうした位は将来の攻めに威力がありますが、このままでは、△7四歩▲同歩△同金と位を解消されてしまいます。
そこで、「位を取ったら、位の確保」。この確保に▲7六銀と出ていきます。これで、△7四歩から金が出てきても、再度▲7五歩と打つことで、この地点の位を確保することができます。

5五の位は天王山/駒は中央へ向かえ

位の中でも、5五の地点は、特に重要と言っています。
また、位だけでなく、駒は辺より中央にいた方が利きが強いのです。ですから、駒の活用は、中央へ向かって進めるようにしましょう。

駒が三つぶつかっていれば初段

これは、「歩が三つぶつかっていれば初段」とも言いますが、初心者のうちは、歩を突かれるとすぐ取ってしまうもの。それを取らずに他の手を考える。要するに局面が複雑になっている場合は、それなりの棋力同士の戦いだ、と言っている訳です。

両取り逃げるべからず

両取りは、将棋を指しているといろいろな場面で出現します。
基本的に、重要な駒、価値の高い駒の方を逃げる、これは当然のことです。しかし、どちらも同じくらい価値の高い場合もあります。そのような時は、どちらかを逃げるのではなく、どちらも逃げずに別の有効な手があるかどうか考えましょう。両取りというのは、結局相手もどちらかしか取れないのですから。

固い攻めてる切れない、勝ち

格言ではありませんが、将棋の勝ちパターンを表している言葉です。
自陣が固く、現在攻めていて、しかもその攻めは切れない、こういう状態なら、勝ちは必然、ということですね。

4枚の攻めは切れない

この格言は、攻めているときの一つの指針となるでしょう。
攻めている時は気持ちのいいものですが、大駒を切ってしまった後、頑強に受けられて、切れそうになってしまうときもあります。
その時、持ち駒と盤上の攻め駒を合わせて4枚あれば、その攻めは切れないという格言です。
しかし、もちろん状況により、4枚あっても切れてしまうときはあります。また、4枚とは、歩は入れず、金銀4枚あるいは一枚位桂香が入って金銀3枚位の感じで、切れるかどうかぎりぎりといった状況を指しています。

勝負は時の運/勝ち将棋鬼のごとし

この二つは、それほど役に立つ格言ではありません。
「勝負は時の運」とは、切磋琢磨して、十分棋力向上を計った人同士で、それでもぎりぎり最後の勝負というのは、序盤に指した手が最後の詰みに利いてきて、まさに運だった、と感じるようなことを言うのです。
勉強もせずに、運だから、と言っている訳ではありません。
「勝ち将棋鬼のごとし」は、勝ち将棋は、指す手指す手が(偶然の要素も含み)みんな有効な手になってしまって、まるで鬼のようだ、ということから来ている状況を表している格言です。

不利な時は戦線拡大

優勢な時は、できるだけ紛れを少なくするために、単純に攻めた方が良いのですが、逆に不利な時は、できるだけ紛れを求め、戦いの箇所を多くした方がいい、という実戦的な格言です。
たとえば、対振り飛車で、右からと金で攻めているような場合、自分が有利なときは、さらにと金を作って、と金だけで攻めた方が単純な訳です。ところが、と金が間に合わないような場合(こちらが不利)、端をからめて攻めるのが有効になります。端攻めや玉頭攻めは、自分もあぶなくなることがありますから、有利な時は、あまりせず、不利な時は、(どうせ不利なのだから)積極的に使うわけですね。

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