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矢倉戦法




矢倉(やぐら)とは、この左図のような囲いのこと。そして、お互いが、この矢倉に囲って居飛車で戦う戦法を矢倉戦法と言い、将棋の主流戦法の一つである。


ここでは、かなり細かい分類になってしまうのだが、森下卓著「現代矢倉の思想」(河出書房新社)が分かりやすい解説をしているので、この本を参考にしながら作成した(1から12まで)。



(1)飛車先不突き矢倉(ひしゃさきふつきやぐら)



図までが初手より24手、現代矢倉の基本形と言える。図のように、先手の飛車先の歩が突いていないが、いつでも突けるとの考えから、あまり早い時期には突かないようになった。
ここから様々な手が考えられるが、(8)以降で説明する▲3七銀が矢倉の本道とも言うべき戦型となっている。



(2)超急戦棒銀(ちょうきゅうせんぼうぎん)



矢倉に組み上がる前に仕掛けようと言うのが、図の、後手からの超急戦棒銀。
あまりにも単純な攻めで、いわゆる原始棒銀のような感じだが、プロの実戦例もある、難解な戦い。
森下プロは、本の中では、先手有利との判断を下している。



(3)3五歩早仕掛け(さんごうふはやじかけ)



(1)の基本形からすぐに▲3五歩と歩を切りに行く手が、矢倉3五歩早仕掛けになる。△同歩▲同角と切れれば、先手十分。
そこで、▲3五歩は取らずに、△6四角▲1八飛△5三銀となるのが、一つの変化。以後、急戦調の難解な将棋になる。


(4)森下システム(もりしたしすてむ)



(1)の基本形から▲6八角と上がるのが森下システムで、一時期流行した有力な戦法。
攻守にバランスがあり、相手の陣形によって、攻めにも受けにもなる。
但し、後手に有力な対策ができた為、最近はほとんど出現しない。



(5)雀刺し(すずめさし)



上記森下システムの有効な対策が、この雀刺し。
図の後手の7〜9筋の攻めの形を雀刺しと言う。▲9三香▲9二飛の形から▲7三桂▲8五桂とはね、端攻めを行う戦法である。
採用自体は一時期減っていたが、森下システムに対し、有効な戦法ということで出現率が増えた。



(6)棒銀(ぼうぎん)



先手森下システム対、後手棒銀の戦型。
図のように、△7三から△8四と銀が出ていく形を棒銀と言うが、棒銀は、居飛車、振り飛車に関わらずあらゆる戦型で出現する有力な戦法である。

図の森下システムに対しては、それほど有効ではないが、先手の陣形によっては、強烈な破壊力を持つ。



(7)郷田流3八飛戦法(ごうだりゅうさんはちひせんぽう)



(1)の基本形から、▲3八飛と回るのが、郷田プロの指した郷田流。
森下システムは、▲6八角だが、これだと雀刺しが天敵になっているが、郷田流はその対応もできている。但し、これからの戦法なのではっきりした定跡はまだない。


(8)3七銀戦法(さんななぎんせんぽう)



(1)の基本形から▲3七銀と上がるのが、矢倉3七銀戦法。
森下プロも、現代矢倉の本道との認識を持っている、もっとも本格的な戦法。
ここから、3筋の歩を角で切り、▲4六角▲3六銀▲3七桂が一つの理想形。後手は、その理想形をさせない為に、様々な作戦を取らなければならない。
以下の(9)から(11)までは、3七銀戦法の中の一つの形。



(9)脇システム(わきしすてむ)



▲3七銀△6四角に▲4六角と上がるのが、脇プロが愛用している脇システム。
すぐに取るのは、手損なので、このままの状態で、駒組みが続くことになる。
そして、戦機が熟したところで開戦となるが、森下プロは、後手を持ちたいとの認識。



(10)加藤流(かとうりゅう)



▲3七銀から玉を囲い合い、▲2六歩と突くのが加藤一二三プロの指す加藤流。
但し、加藤プロは、もっと早い時期に突くことが多いが、▲2六歩と突く形が「加藤流」と呼ばれている。



(11)森内流(もりうちりゅう)



▲3七銀から囲い合い、図の△9四歩と端歩を突くのが森内プロの指した森内流。
森内流は、(12)の矢倉穴熊対策が表看板。
この後、▲2六歩には△9五歩と端を伸ばし、▲4六銀には△5三銀とする。将来、角を追われ、△7三角となったときに、△9三桂から△8五桂とこちらから桂を使う手も見ている。
むろん、変化は膨大。「森内流はいずれ21世紀の主役になりうるほどの価値を持っている」(現代矢倉の思想)とのこと。



(12)矢倉穴熊(やぐらあなぐま)



矢倉戦が持久戦模様になった時に、さらに玉を深く囲うのが、矢倉穴熊。
図のように、▲9八香から▲9九玉とし、さらに▲8八銀と引き、▲7七金まで組めれば、穴熊側有利となる。



(13)急戦矢倉(きゅうせんやぐら)



後手から早い時期に仕掛ける戦法を急戦矢倉と言う。あまり定跡形はないが、図の米長流急戦矢倉や、中原流急戦矢倉、この下の矢倉中飛車も急戦矢倉の一つである。
急戦矢倉は、2筋を切らせる代わりに、5筋6筋から先攻することになるもので、銀を繰り出す方法もある。ただ、いずれの急戦矢倉も、玉型が薄いのが欠点で、攻めがとぎれ、反撃されたときは、負けになりやすい。



(14)矢倉中飛車(やぐらなかびしゃ)



この図の後手側のように、5筋の歩を切り、中央(5筋)に飛車を振る戦法を矢倉中飛車と言う。
飛車は下段(5一)まで引き、8筋は桂のはねられる余地を残しておく(△8五歩を突かない)。双方ともに玉型は薄いので、急戦調の将棋になりやすい。



(15)右四間飛車(みぎしけんびしゃ)



矢倉模様に対し、右四間に構える戦法が図の後手側にある右四間飛車である。
振り飛車に対する右四間飛車と同じく、決まれば攻めは強烈だが、攻め自体は単調になりやすい。



(16)無理矢理矢倉(むりやりやぐら)



図の後手の出だしは、振り飛車模様だ。ここから、先手が▲4八銀なら、△4二銀(△3二銀)とし、△3三銀から△3二金と矢倉にできる。また、図から▲2五歩と突かれれば、△3三角から△3二金、さらに△5二金から△4三金として、無理矢理に矢倉に組むのを、田中寅彦プロの無理矢理矢倉と言う。昔は、ウソ矢倉と言い、矢倉しか指さないアマチュアが用いた戦法だが、田中プロが戦法として成り立つことを証明した。
角換わり模様からの無理矢理矢倉もある。




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