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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年11月2日出題)

第523問(2015年11月1日 行方八段-藤原七段戦)
(問523-1)
先手行方八段、後手藤原七段で戦型は後手の向かい飛車に先手の居飛車穴熊。一通り駒組みが終わった所で、後手から△2四歩▲同歩△同飛と動いたが、先手が▲2六歩と自重した為、第二次駒組みへ。その後、先手は金銀四枚を穴熊に引きつけ、後手が押さえ込めるかどうかという戦いになった。
そして下図、今△3六銀と飛車取りに出て先手の応手を聞いたところ。ここではどのように応対すべきか?先手行方八段の指した一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問523-2)
上図から後手は先手の角を取り大幅な駒得を果たした。ただ、鉄壁の穴熊であることに加え、振り飛車の玉頭に味も付いており、形勢は微差。今、▲8六桂と金取りに桂を据えられたところ。ここで後手の指した手は?先手からの攻め筋を考え、この金の処置を考える。後手藤原七段の指した一手は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問523-1解答)「飛車を見捨てる場合、逃げる場合」
一局の将棋で、もちろん飛車が成り込めればそんなに良いことはないが、実際には飛車を取られる局面というのは結構ある。その取りになった場合、逃げるのか切って勝負するのかはその時々で状況を見て判断しなければならない。
この局面でも、鉄壁の穴熊である故に、まず銀を取って▲5二銀なども考えてしまうが、さすがにやり過ぎで無理だ。しかしたとえば、5筋に歩が利き、すぐに▲5二歩などと垂らせたり、2六、4六の歩などがなく、△3七銀成▲同角となった局面からすぐ角が使えるようなら飛車を見捨てて攻める手も考えてみたいという訳。
本譜は▲1七飛と逃げたが、実戦では逃げないで戦えるかどうかも常に考えて指すことが大切だ。

実戦はこの後、△4七歩成に▲7五歩と美濃の急所に手を付けて、先手が細い攻めをつなげられるか、後手が凌ぎ切れるかという状況が延々と続いた。

(問523-2解答)「筋悪でも耐える逃げ方」
右半分がなければ、△6四金と歩を払いながら逃げることが出来、そんなに味の良いことはない。しかし、△6四金には▲2四飛△同飛▲4二角と打たれしびれてしまう。△7三金も▲7四歩があり、△7五金も▲6三歩成から同じ筋が待っている。
そこで次の一手は△8四金しかない、と言うのが実戦。上から攻められそうな時ならともかく、右から攻められそうな局面においては、とても働きのある場所とは言えず、それ故この動きは筋悪だ。しかし、それ以外の場所はいずれも先手からの攻めが決まってしまうため、仕方ない場所とも言える。終盤では筋だけでなく、常に正確な読みを入れて着手する必要がある。

この後本譜は、▲7三歩と叩き、△同玉に▲2五歩と飛車交換を強要、先手の攻めに後手の凌ぎが続いた。そしてずっと難しい局面は続いていたが、最後は先手の攻めがつながり、早指しの穴熊戦ならではの勝ち方で先手の行方八段が勝利した。

なお、 この一局自体は「詰むや詰まざるや」の局面にまではならなかったのだが、終盤の一局面を参考に、「今日の実戦の詰み」を作成してみたのでそちらもどうぞ。

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