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NHK杯に見る受けの手筋

(2015年11月23日出題)

第526問(2015年11月22日 佐藤康光九段-宮田六段戦)
(問526-1)
先手佐藤康光九段、後手宮田六段で戦型は先手の角交換向かい飛車。これに後手は居飛車で矢倉に組み、先手は▲5七銀型の美濃囲いとした。戦端は、この角交換振り飛車で良く見られる桂頭の▲7六歩を狙った後手の△5四角から始まった。途中、飛車を取り合う激しい展開も考えられた所だが、細かい折衝の後、先手の飛車は▲5九へ逃げ、後手も▲7四歩を払って均衡は取れている。そして今、▲7五歩と先手が銀の動向を聞いたところ。ここで指された後手宮田六段の指した一手は?もちろんこのまま▲7四歩と取られてはいけないので何か応対する必要はある。どのような指し手で返したか?

(答えはこの下に)
(難易度・・・



(問526-2)
上図から左辺の攻防が一段落し、先手は中央で飛車をさばき、後手は△2四桂から端攻めを敢行した。そして今、先手は△1六香と執拗に玉頭を攻められているところ。まだ詰むわけではないので、後手玉に詰めろや必死がかかるなら手抜きも考えられるが、次に△1七香成と玉頭に成り駒を作られてはあっという間に寄せられてしまう。ここで先手佐藤九段の指した一手は?こういう局面では当然の一着であり、仕方ない受けの一手とも言える。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問526-1解答)「飛車をさばく銀捨て」
▲7五歩に対し、普通に応接するなら△6三銀だ。ただそうすると▲8三銀成から△7三の桂をタダで取られる可能性はある。そこで宮田六段の指した一手は△7五同銀。先手の▲7五同銀に△6五桂と跳ねて、▲同桂なら△7五飛と飛車をさばきながら銀を取り返すという読み。鋭い反撃で、実戦は△6五桂に▲6四銀と逃げたが△7七飛成と桂を取った局面は、銀と桂香の交換となり少し後手が指しやすそうに見えた。

本譜は、後手の飛角を働かせる間に先手の飛車をさばけるかどうかという状況になったが、その飛角をすぐに働かせられないと判断した後手が美濃の端攻めを敢行、今度は中央と端の戦いに移って行った。

(問526-2解答)「玉頭はしっかり受ける」
次に△1七香成と成られてはダメので、ここはその手を受ける一手。そして受けるとすればまず▲1八歩が一番しっかりしている。しかしこの局面は二歩になってしまい歩を受けることが出来ない。そこで▲1八香と香で受けたのが本譜。
こういう局面では安い駒から受けるのが正着になることが多い。理由は三つあり、一つは、高い駒(強力な駒)は攻めに使いたいからということ。二つ目は、高い駒、たとえば金などが1七に残るとかえってこの駒を目標に攻められてしまうから。そして三つ目は、こういう端の攻防では受けた駒が交換になることが多く、結果相手に渡ってその駒で攻められるからである。つまり、歩が一番良く、歩を使えない場合は香、それもない時は、銀や桂という風に覚えておきたい。

本譜はこの後も難しい終盤戦が続いた。しかし最後に受けを誤った後手が一瞬で負けの変化に飛び込んでしまい、先手佐藤九段の勝利となった。

なお、この将棋の最終局面(▲1三角を△同玉と取って以降)は、即詰みだったが、詰まない方に逃げても必死になり勝敗は変わらない。しかし、実際には意外な詰み手順が含まれていたのでそれを「今日の実戦の詰み」として載せたので、そちらもどうぞ。
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