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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年6月6日出題)

第551問(2016年6月5日 谷川九段-阿部光瑠六段戦)
(問551-1)
先手谷川九段、後手阿部六段で戦型は横歩取り△3三角戦法。これに後手の阿部六段が、△6二玉から△8五飛と序盤早々研究とも言える趣向を見せた。それに対し先手が飛車を押さえ込む生角を放つと、さらにその読みを上回る妙手順を見せて後手の阿部六段がリードするという見応えのある序中盤になった。その後、後手は左金を前戦に繰り出すなどリードを保ち終盤戦へ突入、今△6九角と打ち込んだところ。次の△4七角成を受ける手が難しく、後手がこのまま押し切るかと思われたが、ここで先手の谷川九段は差を離されない手順でこの危機を凌いだ。先手の指した次の三手は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問551-2)
上図から後手の猛攻は続き、先手の守りの金ははがされてしまった。しかし、6筋の歩が切れた為、今▲6二歩と敵陣に嫌みを付けたところ。後手から見れば、優勢なだけにこういう手は嫌なもの。詰めろではないので先手玉に必死がかかれば分かりやすいが、そこまではっきりもしていない。ここで指された後手阿部六段の手は?この局面では自然な次の三手は何か?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問551-1解答)「軽妙な角の繰り替え」
ここで先手の指した手順は▲5九角と引き、△4七角成に▲6八角だった。△4七角成だけを防ぐなら一応▲3八金と上がれば防げるが、そっぽへ行くという筋悪な上、△8六歩や△2七歩が利くこの局面では、△5八角成と成った馬を捕獲することは出来ない。受ける形がないと思われるところでこの角の繰り替えが妙手順だった。これでも形勢が好転したということではないのだが、「なるほど」と思わせる手順だ。

本譜は△2七歩から△5六金と出たのに対し、▲3五銀で勝負。以下、先手陣が強襲され第2問へと続いている。

(問551-2解答)「局面ごとに違う受けの形」
ここでは実戦もそうしたように、△6二金と歩を払い、飛車の王手に△6一銀と引くのが形。まず最初の一手は、手抜いて相手玉に必死がかかるなら手抜きも正解だが、まだ先手玉は寄らない。そこで△6二同金は仕方ない。飛車の王手にどうするか?△6一金と引くのでは、いつでも▲6二歩や▲5二金があるし、持ち駒を打ってしまえば固いが、今度は金がなくなり先手玉も寄らなくなってしまう。△6一銀も、部分的には8筋が弱くなり△4七馬が動くといつでも▲8三に駒を置く手や、持ち駒を渡しすぎるといきなり▲8二から捨てて詰んでしまう場合もある。しかしそれでもこの局面では、△6一銀と引くのが形。これで一手差で後手が勝てるはずだった。

本譜は、▲3三銀成に△5六馬と引いて利かせたのが疑問。感想戦でちょっとだけ触れられたが△6九馬と入っておけば受けが難しかったようだ。8三の地点を気にして攻防に引いてからは形勢が急激に接近しその後数手で逆転。先手の谷川九段が見事な逆転勝ちを収めた。

なお、上図、どのくらい先手に駒があれば詰むのか考えて問題を作成してみた。その結果、(馬や飛車筋をさえぎる為の)歩の位置の若干の変更以外には、先手に6八の角と3筋の二枚の銀、さらに2九の桂を加えたら11手詰となったので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。
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