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NHK杯に見る受けの手筋

(2017年10月9日出題)

第619問(2017年10月8日 糸谷八段-郷田九段戦)
(問619-1)
先手糸谷八段、後手郷田九段で戦型は横歩取り△3三角戦法。先手の▲6八玉に後手も横歩を取り返し中盤戦に入った。下図は▲3五飛と引いた手に後手が反応し、角交換して△4四角と打ったところ。これにどうするか?まず初心者向けに何を受けなければいけないかを問う。その場合二択でどちらも正解。また実戦は、その二択で実際に指した手を糸谷八段は後悔していた。その二つの手の比較を有段者向けに問う。実際に指した手とこう指すべきだったと感想戦で話した手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問619-2)
後手の攻めが炸裂し、優勢の終盤戦になっている。今、△7六飛と浮いたところ。この手もこの瞬間は何も当たっていない為、気づきにくい手だが、次に△6六飛の王手と△8六飛を見て非常に厳しい一着。受け方が難しく、先手敗勢になりそうな所だが、一番被害なく受ける、と言うより、攻めるのが一番難しくなりそうな凌ぎとは?先手糸谷八段の指した手から進行を七手まで。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問619-1解答)「自陣の危険度を考える」
飛車取りだからと言って▲2五飛と逃げるのは、△8八角成▲同金△同飛成で先手必敗。また▲7七桂と跳ねるのは、△8七歩と打たれどう応対しても飛車を取られた後、その打ち場所を与えてしまう。
という訳で、有段者なら▲6六角と打つか▲7七角と打つかの二択になる。▲7七角は第一感だが、△3五角▲同歩△2二歩の局面の形勢判断、自陣と敵陣への次の手があるかどうかの考察などいろいろ考える必要がある。▲6六角に飛車を取ってくれれば▲7七角の時より▲8四歩が利く分数段良い。但し、▲6六角では実戦でもそうなったが、△同角と取られると▲同歩の形が悪くなり、それらを踏まえてどちらにするかを考える。

本譜は、両者の指し手が早く、多く時間の取れた感想戦でもなかなかこの局面以降、先手にかんばしい変化が出てこなかった。実戦的にはまだまだ難しかったと思われるが、後手の攻めが決まり後手優勢の終盤戦となってしまった。


(問619-2解答)「龍を追い返し、第二ラウンドに期待」
△7六飛が幸便で、先手の受けがないように見えた。しかし実戦、▲9八角と打ち、△9九飛成に▲8七角と歩を払い、以下△6六飛▲5八玉△9七龍に▲8八銀と進んだ。こう進んでみると、香は取られたものの龍を追い返し、(アマチュア的には)大きな被害なく、局面を収めたと言うことになりそうで、なるほどと思える凌ぎだ。龍を完全に追い返し、▲3八角まで使えるようになれば、先手も盛り返したと言える。

しかし本譜は、龍を逃げながら一歩を取り、その一歩を△2六歩と使って手を作れるというまさに”勝ち将棋鬼の如し”のような展開になり、先手陣だけ終盤という状況に陥ってしまった。結局、差は開く一方となり、後手郷田九段の完勝譜が出来上がった。

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