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NHK杯に見る受けの手筋

(2018年7月23日出題)

第658問(2018年7月22日 谷川九段-佐々木勇気六段戦)
(問658-1)
先手谷川九段、後手佐々木六段で戦型は角換わり戦。先手の早繰り銀に、後手は腰掛け銀から△4三銀と引く形で▲3五歩を受けた。そして中盤、先手が銀を▲2六に繰り替え▲1五歩と端を攻めると、後手は応戦一方となり先手がリードする形で終盤戦へ入った。下図はその真っ最中。今、▲1三香成に△1二歩と受け、一旦▲1四成香と引いたところ。ここで後手はどう指すべきか?何もせずに先手にもう一手指されるとはっきり受け切れなくなる。ここで指された後手の次の一手は?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問658-2)
先手の強烈な攻めに後手は目一杯で受けてきたが、やや苦しい。こうした苦しい所でどのように勝負形に持っていくかも大切な指し方だ。今▲5五角と銀を取られた所で、次に▲8二銀のような攻めが見える。そこでどうするか?ここで指された後手の次の一手は?厳密には三手一組の手と言えるが、実戦で良く見る受けの手筋でもある。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問658-1解答)「玉は下段から脱出する」
「玉は下段に落とせ」はもっとも役に立つ実戦的な寄せの格言。と言うことは逆に言えば、玉は下段から脱出するのが、簡単に寄せられない指し方と言える。この局面、何もしないと、▲1五桂のような手が飛んできて、それから上がっても▲4一角や▲2四歩など次々と攻めて来られあっという間に寄ってしまいそうだ。そこで△2二玉と上がっておくのがこうした局面での常套手段。もちろんこれでも▲2四歩や本譜▲3五歩など攻められるが、何もしないで攻められた時に比べると格段に攻めは遠くなっている。

本譜は後手苦戦の状況は続いた。しかし決め手を与えないまま頑強に受け、さらに攻め味も見せつつ局面は進行し第2問へと続いていった。

(問658-2解答)「大駒は近づけて受けよ」
ここでの次の一手は△6四歩。▲同角と取らせて△6一香と打ったのが実戦。やはり終盤では大駒に当てて先手を取りたい。と言うのはたとえば単に△6一香では角に当たっておらず、▲8二銀のような手を指されてしまう。もちろん、▲6四同角に△6一香と打っても、本譜のように▲9一角成と攻め込まれて形勢が悪いのは仕方ない。ただ、平凡な手ではっきり悪くなるのと、相手に大駒を切らせるような手を指させるのでは終盤戦における逆転での勝率も違ってくるだろう。

本譜は光速の寄せが炸裂した。後手も先手玉に肉薄し、もう一歩の所まで行ったが、先手は寄せの見本のような挟撃の形を築き、きっちり一手差勝ち、先手谷川九段の勝利となった。

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