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六枚落ち定跡(1筋攻め)の再現

(六枚落ちの話)
第六話 六枚落ち定跡−1筋攻めpart1

六枚落ちの9筋攻めについて一通り解説したので、ここからはもう一方の端である1筋攻めについて見ていきたい。と言っても、実を言うと、1筋攻めについては、あまり説明するところがない。破り方までの定跡としては、それほど簡明なのである。また、今までは、「駒落ち定跡」をベースにしてきたが、ここでは、将棋世界2002年11月号の先崎八段の「駒落ちのはなし」から手順をなぞっていきたい。

初手△4二玉は、9筋攻めでも言ったように、融通の利く上手の有力な指し方だ。しかし、玉が1筋に近いこともあり、1筋から攻められた場合には、逆に欠点にもなりやすい。

1筋攻めと言っても、いきなり▲1六歩と突くわけではない。まず、角道を開け、次に▲2六歩と飛車先を突く。「駒落ち定跡」の本では、飛車先を突かずに▲1六歩と突いているが、これは次のページで解説しよう。

先崎八段は、▲2六歩の重要性をこの「将棋世界」で説いているが、確かに簡便に破るなら、▲2六歩は重要である。
今は、「力をつけたいと思ったら、▲2六歩を突かず、すぐに▲1六歩でも良い」とだけ言っておこう(詳しくは次のページで)。

さて、▲2五歩まで飛車先を伸ばしても、すぐに歩を切ることはしない。平手の場合だったら、飛車先が切れる時に歩を切っておくのは、重要だ。

「飛車先の歩交換三つの得あり」と言う「将棋の格言」があるくらいだから、▲2四歩△同歩▲同飛と歩を切っておくのも悪い手ではない。しかし、六枚落ちの手合い差を考えれば、できるだけ紛れの少ない手順を選んだ方が良いだろう。

そこで、▲1六歩から▲1五歩と端の歩を伸ばす。さあ、ここで、上手は△5四歩と指してきたが、次の一手を考えてもらおう。



(考慮タイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
次の一手の解答の前に・・・、

上図△5四歩のところで、実は1筋攻めに対する有名な「ハメ手」がある。この手順は先崎八段も書いているし、「駒落ち定跡」にも載っている。
1筋攻めは、極端なことを言えば、このハメ手にさえ引っかからなければ、あまり解説するところもない程、単純な定跡なのである。

上図△5四歩の変わりの手順として、△3一玉(変化参照)▲1七香△2一玉▲1八飛△5四歩となったのが、左図だ。

ここで、どうするか。▲1四歩と仕掛けても良いかどうか、7〜8手先まで考えて答えを出して欲しいと思う。

(考慮タイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
▲1四歩と仕掛けるとどうなるか(変化参照)。

▲1四歩△同歩▲同香△1三歩▲同香成△同銀▲同飛成までは必然である。ここまでは銀香交換で、飛車まで成った。

これで大成功と思ってはいけない。次の上手の一手△1一香で、「ギャフン」となってしまう(左図)。

龍が殺され、こうなっては、もう下手の勝てる望みはない。(部分的に▲1四歩は−10点の手、▲1四同香は−30点の手、▲1三同飛成は−60点の手で、トータルで持ち点100点がなくなった感じ)

先ほども言ったように、これは、六枚落ち1筋攻めの有名なハメ手で、龍を捕獲されてはそれまでなのである。では、どうすべきだったのだろう?


このハメ手は、知ってさえいれば、簡単に外せる単純なものである。

しかも、知っていた時(外された時)の上手の被害が大きいので、上手が使うことはめったにない。何度も、六枚落ちを指導しているような場合に、一度だけ使う程度のものである。

正解は、▲1四歩と行かず、▲5六歩(変化参照)△5三銀▲7八銀△4四歩▲7九角(左図)として、1三の地点に角を利かすことである。「駒落ち定跡」でもちょっと形は違うが、▲6六角から▲5七角とし、1三の地点に角を利かしている。

以下、△7四歩には▲1四歩から攻めて快勝である(変化参照)。


このハメ手にさえ、気をつけておけば、後の攻めは単純だ。

本手順に戻り、次の一手の解答であるが、▲2四歩△同歩▲同飛から5四の歩をかすめ取る手ではない。六枚落ちなどでは、時々出てこないこともないが、この場合は、▲2四歩△同歩▲同飛に▲5三銀で、歩を取ることは出来ないし、仮に歩を取っても、飛車が成れないと、なかなか勝ちまで持っていくことは出来ないと思っていい。

正解は、当然▲1七香。そして、△5三銀には▲1八飛と、とにかく1筋に数を足して、攻めるのである。

ここまで来れば、次の▲1四歩△同歩▲同香から端を破れると言うことが分かるだろう。


△4四歩▲1四歩△同歩▲同香△3四歩▲1二香成△3三銀▲2一成香△4三玉▲1二飛成△7四歩(左図)。

はっきり言って、上手は悲しい程、手がない。金銀を取られないように、逃げてはいるが、飛車に成られて、ド必敗である。

将棋センター内でも、常連の人に、六枚落ちの上手を持たせると、「こんなの勝てる訳ないよ」と言った三、四段陣の愚痴をたくさん聞くことになるのだが、実はここまで必勝形を築いても、次の一手が分からないと、なかなか勝つまでは大変なのである。

しかし、9筋攻めを良く勉強してきた皆さんには、もう次の一手は、分かるでしょう。


(考慮タイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
そう、正解は、▲1四歩である。

9筋攻めの時にも、▲9四歩が出てきたように、歩をと金にして攻めるのが、最も厳しい攻めなのである(左図は、点数を付けるなら130点くらいは開いていると言える)。

以下は、再現を参照してもらえれば分かるとおり、難しいところはない。成香とと金を使って、金銀と交換し、その金銀を使って、玉を寄せれば良いのである。

もっとも、ここまで来ても、まだ下手が負けてしまう場合もある。それは、9筋攻めのところでも話したが、この後、タダで駒を捨ててしまったりする場合だ。そうした、タダ捨てさえなければ、後は玉の詰め方だけなので、もう間違えるところはあまりないだろう。


先崎八段は、上の手順では、あまりに上手がひどいので、将棋世界には、上手の指し方も載せている。定跡からは外れ、下手も応用力が必要になってくるので、ここでは紹介しないが、興味ある人は読んでみると面白いだろう。

次のページでは、▲2五歩を決めないで、直接▲1六歩と突く指し方を紹介したいと思う。

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