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将棋に関するミニ感想

2008年7月
7月17日(木) 本の保管と状態の表示

ネットで本を売り始めて早3年が過ぎました。この間、一番悩み、そしていまだに解答を見出していないのですが、本の状態をいかに正確に買って頂ける人に伝えるかということがあります。
ここでは、今まで本の状態について考え、やってきたことから送られてくる本の状態について、その保管方法まで、この3年間で私が知り得たことをできるだけ多くの方にお伝えしようと思っています。

右のスクロールバーを見てもらえば分かりますように、このページは少々長くなります。
将棋タウンで本を買われた方、買おうと思っている方、大量の本を保管している方については、時間のある時で結構ですので是非読んでみて下さい。


(1.古書店の始め)

将棋センター常連の人は気づいているかもしれませんが、私はどちらかというときれい好きで几帳面です。新聞の端はピッタリ揃っていないと気が済みませんし、タオルや雑巾は使用する場所ごとに分かれていますし、ペンやスプーンなどはすべて同じ方向を向いて保管されています。
さらに言うなら、毎月買っている将棋世界の表紙が一度折られていたこと、一度は雨に濡れて本にまで染みこんでいてとても嫌な思いをしたこともあります。(←だからこそ、将棋タウンの本は、ビニールに入れられ、さらにプチプチ梱包と、絶対にそんなことのないよう気をつけています。)

でも、だからと言って潔癖症と言う訳ではありません。特に見えないところは気になりませんし、頻繁に掃除をする訳でもありません。

本に関して言えば、昔から古本も好きで学生の頃は神田の古本屋街を頻繁に歩き回っていました。その頃から買ってくると最初に清掃し、それからじっくり中を読んだものです。(今でも本を読む前に手を洗い、夏は汗で汚れないように常時ティッシュを使っています。)

当時は不思議にすら思わなかったのですが、自分が古書店を始めるときには、やはり状態の良いものと悪いもので同じ値段ではおかしい、と感じていました。やはり、新品同様のものと、使い込まれて黒くなった本が同じ値段なら誰だって新品の方が良いわけですから。

そこで、最初は状態を五段階に分けました。しかし、しばらくしてちょっと細かすぎる、三段階で良いのでは?と考え直し、途中でAからCの三段階に直しました。しかし三段階にしてみると、今度はどうしてももっと悪いものもあり、分類が足りないのです。

そこで現在はAからDの四段階です。但し、Dの値段には幅を持たせてあり、同じDでもCの値段から100円引のものもあれば、状態が非常に悪いものは、500円引になっているものもあります。

それでは現在の状態の付け方について、次に少しずつお話ししていきたいと思います。


(2.将棋タウンの本の状態評価)

以前、メールマガジンで、「近いうちに本の状態を詳しく表示するようにします。」と話したことがあります。ところがいつまで経ってもそれをしない。「いったいあれはどうなったの?」と思っている記憶力のすごい方がいるかもしれません。

実は、実行直前まで進めていたのです。

私の頭の中では、本の状態を四段階に分けること。こうなっていればB、これならCというものが明確に分かれていました。

それを後は数字で表せば良い。そう思い、左の表をExcelで作成し、これで正確に本の状態表示をしようとしたのです(もう半年以上前のことですが)。

たとえば、カバーがかなり汚れていれば3、さらに本体に焼けがあればその状態により3、合計6点となり、6であればBとする、と言った具合です(Bは左の表にあるように足した合計が4〜9)。
カバーがなければそれだけで9、もし本体が未使用ならギリギリBですが、そんなことはまずないので、他の状態が良くてもC、通常カバーのない本は、本体の汚れが4、焼けが4、使用感が4くらいにはなりますので、大抵Dとなる訳です。

私の頭の中でやっていた「これはB、これはC」というものを、できるだけ正確に数字に表せるように、左の数字の分け方などは何度も変更しました。

そしてほぼ出来上がったのが、この評価基準で、実際これに基づき、本の状態を区分し、整理していったのです。

実は、ここまで進んだ段階で、「よし、これなら出来そうだな。」と思い、メールマガジンにそのことを載せたのです。

ところが、大変なのはここからでした。

今まで頭の中でやっていたことを、実際に数字にまるを付け、足して状態を決めるだけなのですが、当然のように今までより時間がかかります。でもそれくらいなら仕方ない、と思っていたのですが、さらにそれを古書店の場所にも表示する。一つ一つインプットするのが予想以上に大変でした。

少しやっては見たのですが・・・・・「うーん、大変過ぎる。時間がかかり過ぎる。」・・・出来ないかも(^^;

結局この計画は途中で挫折しました。しかしそれでも出来る限り多くの情報を伝えたいとの思いはありますので、以前よりはたくさん本の状態を書くようにはしています。

そこで、私の本の状態の付け方を知っていただく為、以下に出来るだけ詳しく書いていきたいと思います。

まず、カバーをチェックし、次に小口をチェック、最後に本体の中をパラパラッとめくってチェックします。

まずはカバーです。カバーの傷みの大半は、汚れと焼けです。私の頭の中にはこれが汚れ、焼けの真ん中、という基準があり、それより軽ければ1、重ければ3と判断します。

シミのあるものはほとんどありませんが、それだけに小口と違って、あればほとんどが3となります。
折れているものについては1か2、破れているものについては、5mm程度なら2、1cm以上破れていれば3となります。
キズも、たとえば、本同士でこすりあっても細かいキズは出来ます。軽いものであればやはり1、細かいキズがたくさん付いていたり、全体に傷みのひどいものは3となります。(ちなみに左の表には傷みが痛みとなっていますが、これは表を全部コピーしてから気づいたので、人に見せるものではないと思いこのまま使っていたのです。)

書込などはカバーにはほとんどありませんが、やはりあれば3となります。

カバーに多いのが、テープや糊で止めてしまう人。テープ止めの跡がちょっと残っている程度であれば1ですが、はがれないくらい強力に止めてあったり、はがした跡が汚くなっている場合は3となります。

「古さ」というのは、実は”なんとなく”です。つまり、はっきりした汚れでもなく、焼けてもいない。でもなんか古くさくなっている、なんとなく状態が悪い、というものが出てくるのですね。そういうものをここに付けるようにしています。

カバーがないものは、それだけで9点。逆に言うと、ものすごく汚れて、焼けていて、落書きまでしてあったら、ない方が良いだろうという訳です。

次に小口のチェックです。

小口は1から5まで五段階に分けています。そして汚れがもっとも多いのですが、やはりこれもこのくらいが真ん中という基準があり、それが3となります。

小口に特有なのが、シミです。「経年のシミ」という言葉で多くの本の備考欄に書いていますが、要するに長い間ホコリなどがたまったままにしておくと発生する斑点のシミです。この経年のシミは、薄いものが数点ある程度であれば3とし、その濃さと多さのみで1から5に分けています。

シミの大半はホコリによる「経年のシミ」ですが、中には、それ以外の液体のシミもあります。但し、それ以外のシミはカバーや本体に付くことが多く、小口に関して言えばほとんどが経年のシミと考えられます。

最後の段差とは何かと言うと、機械研磨した為に、本体とカバーにズレの生じているものです。機械研磨は、ブックオフなどでもやっていますが、売れなくて返品された新品の本でも出版社で行なわれています。基本的に汚くはないので、1か2のどちらか(段差が大きければ2)ということです。

最後に本体の評価です。

汚れが多いのはカバーと小口です。本体にまで及んでいることは比較的少ないのですが、焼けているものはたくさんあります。

但し、紙質によりすぐに焼けが生じるものと古いものでもほとんど焼けの生じないものがあります。これらもやはり真ん中の基準があり、それより軽いか重いかで状態を決めます。

シミについては、小口にある経年のシミが一番多いのですが、古い本ですと、本体内部にまでシミの届いているものもあります。また、経年のシミではなく、本体に入ってしまうものには、それ以外のシミもあります。
この原因の分からない液体のシミ(飲み物とか保管の悪さによる雨水などと考えられます)については、かなり厳しく、通常4か5としていますが、こうしたシミのあるものはまずDとなります。

本体にたまにあるのが、「耳折れ」。使っている人が目印にほんのちょっと角を折ったものです。個人的には(こんなことをする人が)ちょっと信じられないのですが、これも1ページなら1ですが、数ページあれば3か4となります。


さらに本体に特有なのが、そりやねじれ、曲がり、ゆがみです。普通に読んでいるだけでもその跡が付き、そりが発生します。それでも保管するときに、元に戻してしっかり本棚に入れてあればある程度は元に戻るのですが。

ねじれや曲がり(今は曲がりで統一していますが、同じ意味です)は保管の悪さによるものです。たとえば、本全体が曲がって立てられたまま何ヶ月も何年もそのままになっていると曲がりが発生します。
段ボールに詰めて保管する場合でも、乱雑に入れておくと、ねじれたり曲がったりしますので注意が必要です。

そり、曲がり、ゆがみについてはなかなか説明が難しいのですが、左の写真に説明を入れて見ました。

そりが最も多く、次に曲がりとなり、ゆがみのある本が送られてくることは実際にはほとんどありません。


書込や線引きは基本的に同じ性質のものですが、二項目に分けたのは、それだけ評価が厳しい(両方で最大10点になる)という意味があります。そもそも書込のあるものは、よっぽど新品同様なもの以外はこれもDとなります(比較的きれいで書込が少しの場合はCの時もあります)。

古書店跡とは、多くは裏の見返しに古書店のシールが貼ってあったり、それをはがした跡、さらには値段を直接書いたりその跡が残っているものです。この古書店跡についても実は個人的にはかなり信じられない行為です。個人の人が自分の本という意味で名前を書いたり、判を押したりする気持ちは分からないではありません(自分はしませんが)。でも古本屋でしょう!どうして自分の扱っている商品に直接シールを貼ったり値段を書いちゃうかなぁ!って思ってしまうのですよ。本が好きで古本屋をやっているとは思えないのですが・・・自分の方がおかしいでしょうか?

送られてくる本には、全国各地の古書店のシールやブックオフの値段の貼られたものがあります。値段はカバーに張られていますからシールはがしを使えば大抵きれいにはがせるのですが、多くの古書店でやっている見返しにのり付けされた紙はきれいにはがせません。
実は、最初の頃はこれもきれいにはがして出そうとしていたのですが、結局跡が残ってしまうため、現在では何もしないでそのままで出しています。

もちろん私の状態分けはすべてしおり(紙)による色分け。値段とか書込有りなど必要なことは、インクが本に付かないように、本から出ている場所へ書くようにしています。
もっとも、この古書店跡自体はそれほど汚い訳ではありませんので、評価は1か2となります。

ワレ(上の紙には割れ)とは、本体の背の部分がパカッと割れてしまっているものです。ほとんどの本はこのようにはなりませんが、一部の本で、思いっきり本を広げるとワレてしまうものもあります。強度のワレは一ヶ所でもあれば4、三ヶ所以上あれば5です。

最後の古さ、使用感とはこれもカバーの時と同じで”なんとなく”の部分が大きいのです。

要するに、昭和発行の古い本であるにもかかわらず比較的きれいな本があります。書込もなければあまり汚れもない。なんとなく古ぼけているだけ。そんな時は、「古さ」と書き、Bにする場合は、「古い本の割にはきれい」とし、Cの場合は、それ以外に何か傷みがありますので、「焼け」とか「小口に薄汚れ」とか入れる訳です。

この使用感というのも、半分くらいは”なんとなく”です。特に悪いところがない場合、Aになりそう、でも”なんとなく”使用した感じも残っているのでBだな、というような場合に、「やや使用感」としているのです。

もちろん上の「やや使用感」は、”なんとなく使っていただろうな”と言った程度で、「読みグセ」(読む時に強く本を折ったりした跡)がはっきりあるようなものはCとなりますし、3、4回でも読んだら(小口に汚れ等が付き、使用感が強くなる為)ほとんどがCになると考えています。

以上のように、カバー、小口、本体を見て、すぐに状態を決めます。そして、悪い箇所を中心にその状態を載せている訳です。

現在は、上のように一つ一つ数字を付けている訳ではありません。私の頭の中に明確にこれはB、これはCと言うものがあり、総合的に判断しています。
但し、私自身は、たとえば年数だけが経ったような本は比較的甘い評価を、使用感の激しいものは厳しい評価をしています。どういうことかと言いますと、「焼け」は年数が経てば、読まなくても発生します。そして本によってはかなり変色するものもあります。しかし、読んだ形跡の少ないものは、それでもたとえばBにすることもあります(たいていはCになりますが)。
逆に汚れや本を何度も開くとずいぶん使い込んだ感じを受けます。こうしたものは、ちょっとの汚れであってもたいていCにします。もちろん汚れがひどければDとなります。
つまり古い本でも使用感がなければBとなり、新しい本でも使用感があればCとなる訳です。

それでは実際に良く使っている言葉を上に書いたものとやや重複しますが、以下に紹介してみます。

その前に言葉についての説明ですが、一つ一つの言葉の他に程度に応じて私は、軽微な場合「僅かに」を最初に使用しこれが最も軽く次に「軽い」「やや」と言った言葉を使っています。そして普通の場合は特に形容詞を付けず、重い場合は、「強度の」を使い、さらにそれ以上にひどい場合は「重度の」という言葉を使用しています。

また、帯についてもひと言。
帯については、私個人的にはあまり大きな意味を持たせていません。つまり原則どの本にも帯はないものとお考え下さい。但し、Aの本は帯があるものが普通で、ない場合に「帯なし」と入れています。B以下については特に表示をしていませんので原則なし。付いている本が届くこともあります。

状態Dの表示について。
D表示の場合には、最後に(-300)というような表示のなされているものもあります。これは、Cに比べていくら値段を引いているかというものです。300であればCに比べて300円引きということです。
通常1000円くらいの本であれば、100円引きなら、BとCの間と同じくらいの間隔でDの本があると考えていますが、これが300円とか500円引きになっている場合は、極度に瑕疵があるとお考え下さい。たとえばマーカーが引かれていたり、重度のシミがあったりした場合です。この値段はその本ごとに決めています。カバーがないだけで、比較的きれいな本の場合は、それほど差を付けないこともあります。

「経年のシミ」・・・小口にもっとも多く、ホコリなどが長年たまったままになっていると付く斑点。少しでも付いていれば大抵Cに、付き方がひどい場合はDになります。シミが多い場合は、「経年のシミ多数」と表示しています。

「古さ」」・・・昭和発行の本で、特に大きな瑕疵が見つからない場合、「古さ」と表現しています。汚れていたり、強度の焼けがある場合は、そうした状態を書き、古さと言った言葉は省略しています。

「シミ」・・・単にシミと書いてある場合は、「経年のシミ」以外のものです。保管の悪さによる雨水や飲み物などが考えられます。

「経年」・・・状態Aのものには多くこの表現を使っています。取り立てて大きなキズもなく、普通に発行年に買って、本棚に飾ってあるか、たいへん丁寧に読んでいればこのくらいだろうと考える状態です。

「焼け・焼け臭」・・・焼けは非常に多い文字通り本の焼け、紙の変色です。紙質によっては数年しか経っていないのに変色してしまうものもあります。そして、そうした本に限って、焼けの跡の臭いが発生します。これらは単に本棚に保管していても発生するものですので、少々の焼けはあまり評価を落としていません。

「カバーにキズ」・・・これは本同士でぶつかってもキズになります。ちょっとこすったり、乱暴に放り投げたりすることで付くと考えられます。読んでなくても付きますので、軽いものはBとしています。

「使用感」・・・上にも書きましたが、なんとなく使っていた感じです。Bの場合は「やや使用感」という言葉を使い、Cの場合は、単に「使用感」と使っています。何度も読んだ形跡が見られて、全体的に傷みがあるような場合は、「強度の使用感」さらに「重度の使用感」の場合はD表示にしています。


(3.送られてくる本と保管方法)

今まで、数多くの人から段ボール箱で、たくさんの本が送られてきました。それはもう超きれいな本から超きたない本まで、超レアな本からそうでない本まで千差万別でした。

そして、たくさんの本を見て、時々不自然に曲がった本については送ってきてくれた人に質問などもしてみましたところ、いろいろと勉強になることがたくさんありました。そこでここでは、今までにあった送られてきた本の話とどのように保管したら良いかを書いてみたいと思います。

(1)ガラスの書庫は半年に一回、むき出しの本棚は毎月ホコリを払ってあげましょう。

まず誰と言うことではなしに、非常に多いのが、小口の上側に経年のシミが生じている本です。これは私の保管している本にもあって、それ故どうしてこうなったのかよく分かるのですが、要するにホコリがたまった状態で長期間おいておくと、そこにシミが出来るのですね。

ホコリのたまり具合から言って、ガラスの書庫であっても半年に一回は掃除したいものです。むき出しの本棚の場合は、ちょっと日が経つとホコリがたまりますので、毎日は難しくても、月に一度くらいは、本を取り出し、上や棚にたまったホコリを取り除いてあげましょう。

(2)本棚に並べるときは、まっすぐにキッチリと並べてあげましょう。

今、あなたの本棚を見てみて下さい。本はまっすぐにキッチリと立てて並んでいますか?
実は曲がったまま並べられているとそれがそのままの状態で癖がついてしまいます。読んだ時の「そり」とは別に、全体が曲がっている本は、たいてい並べられていたにもかかわらず、こうして曲がってしまったものです。
棚に余裕がある場合は、本立て(ブックエンド)を使って下さい。100円ショップに行けば1つ100円で売っています。

ちなみに私は、どれが使いやすいか、何度もいろいろなブックエンドを買ってきて使って見ましたので、現在100個くらいはあります。いずれ、このブックエンドの話も、メールマガジンの「古書店裏話」で話そうかと思っています。

また、一つ失敗談を話しますと、最初「将棋年鑑」も同じように立てて保管していました。もちろん、曲がらないようキッチリブックエンドで押さえつけてです。
しかし、ある時、一冊が売れて、それを取り出し送りました。残りはブックエンドをずらしてきちんと立てて置いたつもりだったのですが・・・。
しばらくしてまた売れた時に、出してみてビックリです。「年鑑」は大きいので後ろの方まで目が届かなかったのですね。後ろの方がブックエンドからはみ出して、しかもダラッと曲がっていました。
「これはいかん!」とその時反省して、それ以降将棋年鑑は、横にキッチリ揃えて積んで保管するようにしました。

と言うわけで、年鑑のように立てておくと崩れやすそうな本、曲がりそうな本は、横にして保管しておいた方が無難ですね。

(3)直射日光の当たるところに本を置かないようにしましょう。

これは当然なのですが、常時日光の当たるところはありませんので、気づかないうちに当たっている場合もあります。気をつけて下さい。直射日光に当たると、通常よりはるかに焼けがひどくなります。

(4)箱に入れて保管する場合は、ビニールに入れ、横にしてずれないようにしっかり並べて下さい。

今まで送られてきた本の中には、箱に何年も保管されていたのだろうな、と思うような本がたくさんあります。と言うのも、そうした本はホコリになっていたり曲がっている場合が結構多いのです。

以前、ハードカバーの本まで少しゆがんでいた為、送ってきてくれた人に、どのように保管していたか聞いたことがありました。ハードカバーの本がゆがむことはめったにないからです。

するとどうやら小口を下にした状態で、たくさんの本を箱に詰めていたらしいことが分かりました。他にも、乱雑に入れておいたのが目に見えるくらいあっちに反っていたりこっちに反っていたりしている本もありました。

このような曲がりやゆがみを出さないためにも、箱に入れて保管する場合は、縦に並べるのではなく、同じくらいの大きさの本同士で積んで崩れないように入れて下さい。小屋に保管する場合は、ビニール袋に入れて、シリカゲル(乾燥剤)も入れれば万全です。何年経っても、ほぼ同じ状態で取り出すことが出来るでしょう。

ちなみに、このように曲がりやそりですが、キッチリした状態で押さえつけておけばだいたい3ヶ月くらいあれば元に戻ります(強度のゆがみは半年以上)。私は現在このような本はまとめてきっちり押さえつけておもりを置いて保管しています。約200冊くらいはそうした本があるのですが、念のため半年以上、一年以上置いてある本もあります。

(5)注意すべき本

私も送られてきて初めて気づいたのですが、保管したり並べておくのに注意すべき本が数冊あります。

その第一は、「B級戦法の達人」「B級四間飛車の達人」「B級戦法の達人プラス」の三冊です。
これは、ぎゅうぎゅうに詰めて長い間保管しておくと、インクが他の本についてしまうのです。そのため、箱の中にこの本が入っている場合は、すぐに取り出し半透明の紙で、カバーを作ります。
販売するときでも、このカバーを付けたままお送りしていますので、最初から付いていたのかと思う方もいるかもしれませんが、これは東急ハンズで買ってきて、裁断して私が付けたものです。
ちなみにこれは「パラフィン紙」と言われているもので、名称を調べたり、近くに売っているところを探すのに苦労しました。で、結局、分からないまま現物を東急ハンズに持って行って「同じものを下さい」と言って手に入れたのです。

最近の本ではこれだけですが、昔の本でビニール製の本は気をつける必要があります(大山の将棋読本など)。これもやはり他の本とくっついて色を取ってしまう(他の本のカバーとくっつく)からです。こうした本や、サイン本にはすべてパラフィン紙で他へ影響しないように保管しています。


(4.販売している本の清掃について)

現在、将棋タウンで販売している本は、すべて除菌清掃して小口の研磨も少しして出しています。ブックオフでもきれいな本を強調していますが、その比ではないと思っています。

そのやり方を公表すべきかどうか迷ったのですが、このようなことをしていると言うことを具体的にここに記そうと思います。

(1)まず本が送られて来ますと、一冊一冊チェックし、状態を確認、値段を付けます。そして通常は一週間以内に、買取金額を支払い、出版社ごとに分けて整理しておきます。但し、この前でも書きましたように、そりや曲がりのある本は、何ヶ月も当分出さないので、一ヶ所におもりを乗せて矯正することになります。

(2)そうした在庫を見て、来週の月曜日はこれを出そうと決めます。

(3)出す本を決めましたら、まずアルコール除菌ティッシュで清掃します(アルコールは三種類)。

カバーの表裏、さらに折れている内側も、つまりカバー全体を拭きます。焼けているのはどうしようもありませんが、これで汚れはかなり取れます。一度も読んでないんじゃないかと思うような本の場合は、サッと一拭きです。黒く汚れているような本は、ゴシゴシしっかり拭き取ります。拭いた後、若干液体(アルコール)が残るので、それをティッシュで軽く拭き取って終了です。
なお、ティシュでアルコールを拭き取っている時に、時々ティッシュが切れることがあります。万一ティッシュの切れ端が本に挟まっていたら、たぶんそれは私が拭いたときに誤って残したものですので気にしないで下さい。

(4)次に小口の研磨をします。

ブックオフなどは小口の研磨に大きな機械を使っていますが、あれは100万円以上しますのでちょっと買う訳にはいきません。しかし小さいものは50万円くらいからありますので、いずれ揃えるかどうかは考慮中です。

ただ現実問題として、機械でなくても、つまり紙ヤスリでかなりきれいになるのですね。紙ヤスリには、目の粗さによって種類がたくさんあります。私自身いろいろなものを実際に試して、最終的に二種類のものを使い分けています。
写真を載せてみましたが、たいしたものではないので、この作業の写真はちっちゃくしてあります。なお、拭くのは部屋で大丈夫ですが、研磨は細かい粉じんがかなり飛び散りますので、外で作業します。

この紙ヤスリで小口をこすると、ちょっとした汚れはすぐになくなります。およそ0.1mm程度削る感じでしょうか。但し、汚れのひどいものや経年のシミなどは本体に1mmは入り込んでいますので、おそらくはそれ以上削らないときれいにはなりません。
機械ならきれいになるのかもしれませんが、紙ヤスリでは限界と感じるところです。

なお、小口の研磨をする時には、カバーを外して行います。実はこれには利点が2つあります。一つは万一、中の本とカバーが違っていてもこの時に気づくことができます。二つ目はカバーだけでは気づかなかった裏側や本体の表紙の汚れにも気づくことです。

実は、このような作業をしていて、「秘伝穴熊王」のカバーの裏側にまで印刷物があることに気づいたのです。(これ以外の本では、今までの所、カバーの裏に印刷されている本はありませんでした。)これは制作者のちょっとした遊び心?でしょうか。

(5)さて、これで清掃は終わりです。次にするのは、本の状態の評価。これはこの前に書いたように、一冊一冊カバーから小口、本体とじっくり見て、AからDのどれになるかを決定します。

私が一番気にしているのが本体の書込の見落とし。見落とさないよう、二重にチェックをしているのですが、それでも見落としがないとは言い切れません。

最初のチェックは、本が送られてきた時。本の買取額を算出するために、本を見て、その時に書込や大きな瑕疵に気づけば、その場でしおりを挟んでおきます。将来本を出す時に見落とさないようにです。

そして、出す前にも当然チェックはします。ただ、正直申しますと、全体的にきれいな本のチェックはどうしても甘くなります。つまり、50冊送られてきて、そのうちの10冊を見たら、非常にきれいで書込もまったく見られなかった。こういう場合は、残りの40冊も(たぶん)書込はないだろうとチェックが甘くなるのです。

逆に、10冊のうちに2冊もマーカーで線が引いてあったら、残りの40冊も目を皿のようにして一枚一枚ページをチェックすることになります。

ですから、自分が見落とすことがあるとしたら、上のように、非常にきれいでチェックが甘かったものの中に一冊だけ少し書込があったり線が引かれていたりした場合と言えるのです。

(6)発送時に最後の確認
発送時には最後の確認をします。発送する本が間違っていないかどうかと言うことと、一応パラパラッとめくって、本の状態が間違っていないかどうかをです。

以上が私が行っている本の取り扱いです。
本の買取額ははっきり言って少ないな、と思うこともあります(それでも大手の古書店よりは多いと思うのですが)。しかし、上に書いたように、一冊一冊丁寧に清掃し手間をかけているとどうしてもそうなってしまいます。そうした手間を少しでも少なくするよう工夫はしているのですが、現状のところは手一杯です(←詳細な分類方法が挫折した言い訳にもなっていますが)。

また、一冊にかける時間が少なければそれだけ安く売れるとは思うのですが、それでも本に対する思いからきれいにすることだけはやはり続けたい。ですから「きれいな本でビックリしました」とのメールをもらうのがとてもうれしいのです。

このようなことからあまり安く売っている訳ではありませんが、ご理解頂ければと思います。


(5.まとめ)

さて、本の状態の評価から本の保管方法まで今までなんとかお伝えしてこようと考えていたことを出来る限り書いてみました。
これですべてと言うわけではありません。うまく表現できないこともたくさんあります。ただ、多くの方に本を買って頂いていますし、今後も本の状態はこのように見て頂きたいと言うことで、細かいことを書いてみました。

また、今大量の本が本棚にある、箱で本を保管していると言う方にも、これを読んで注意して頂きたいと思います。大量に本を買う人はやはりそれなりに思い入れがあると思います。ですからあまり傷まないように保管して欲しいのです。

もし要らなくなったときは、将棋タウンで買います。その時は、そりも曲がりも書込もないきれいな本なら高く、そうでない本は安くなってしまいますので是非きれいなまま保管して置いて下さい。

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