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その十 将棋上達法(一般論)

「将棋が強くなるにはどうすればいいですか?」と言った質問を掲示板やメールでいただくことが多いが、残念ながら一言で説明できるほど簡単ではない。それは、その人の棋力によっても、環境によっても、勉強方法が違うからであり、これをやれば、すぐに強くなると言うものではないからである。とは言え、一般的に、多くの人達がやってきた勉強法というものはあるので、それを、あくまで一般論ではあるが、このページにまとめておくことにした。

なお、将棋上達関連の記事としては、勝手に考察文の中に、「将棋上達論」(削除済)があり、ゲームセンターの中には、「将棋上達チェック表」があるので参考にして欲しい。

まず、一般的な将棋上達の手段を箇条書きにしてみた。

  1. 実戦を行う(平手と駒落ち、その感想戦など)
  2. 本による勉強(詰将棋・必死問題・次の一手・定跡を覚える・手筋を覚える・観戦記を読む・棋譜並べなど)
  3. 観戦する(テレビ将棋対局や講座を見る・強い人の将棋を見るなど)

では、一つ一つ具体的に見ていこう。

(1)実戦を行う(平手と駒落ち、その感想戦など)

「実戦」とは将棋そのものなので誰でもやってきたことだと思うが、楽しむだけならともかく、強くなろうとして実戦を指すのであれば、その練習方法に気をつけなければならない。
よく職場などで行われているように、一局10分程度で終わってしまうような早指しでは、おそらく何百局指しても少しも強くならない(但し初心者のうちは別:後半参照)。

強くなるための理想的な実戦とは、1局1時間〜1時間半の対局を、自分より少し強い人と行い、さらに感想戦で、悪かったところを指摘してもらうことだ。
また、駒落ちでちょうどいい手合いの人とも指せる機会があればもっといいだろう。勝ったと思って指している終盤で、上手の「うまい手」で逆転される、そしてその時、どう寄せれば良かったか、教えてもらい、1局で一手でもその感覚をつかめれば、大いに収穫があったといえるだろう。

(2)本による勉強(詰将棋・必死問題・次の一手・定跡を覚える・手筋を覚える・観戦記を読む・棋譜並べなど)

上達するための良書は、「管理人推薦の将棋本」(削除済)のページに載っているので、そちらを参考にして欲しい。

まず、詰将棋だが、これは誰にでも当てはまる将棋上達法の一つだ。
ただ意外に嫌いな人が多いのも事実。実戦や観戦に比べて、単なるパズルなので、「つまらない」と感じてしまうのだろうが、それでも、将棋は「玉を詰ます」ゲームだ。強くなるためには、必須の勉強法と言えよう。

そして、「上達するための詰将棋」とするなら、あまり手数の長いものや、難解なものを詰ます必要はない。3手、5手詰から始めて、初、二段クラスでも11手詰程度のものまでで十分と言える(私が作っている「実戦の詰み手筋50」(削除済)の問題では、詰将棋よりはやさしいので15手までとしている)。

詰将棋が楽しい人は何も言わなくても解くだろうから問題ないとして、嫌いな人で、でも将棋が上達したい人。そう言う人は、1日1問とか3問とか必ず解くと決めて、毎日実行すること。少しずつでも継続すれば力となるはずだ。
また、1問にかける時間は10分くらいでいい。これくらい考えて解けなければ、後日に回してもう一度挑戦するのもいいし、あるいは解答を見てしまっても構わない。ただ、1〜2ヶ月後に、解けなかったものは、もう一度チャレンジしてみよう。

必死問題や次の一手など、詰将棋以外の問題集も上達の助けになる。ただ、個人的には、詰将棋ほど重要だとは思っていないので、好きな人は、もちろんやって構わないが、あまり片寄った勉強はしないようにしよう。

定跡や手筋を覚える。これも上達のためには欠かせない勉強だ。
もっとも、級位者のうちは、あまり定跡の細部にこだわる必要はないと思う。定跡は所詮互角の分かれまでの指し方であるし、将棋は変化無限だ。
最初のうちは、むしろ手筋を多く覚えるようにして欲しい。数多くの手筋を覚え、それを実戦で使えるようになることで、将棋の本筋が見えてくるようになる。

プロの指した将棋の観戦記を読んだり、棋譜並べも重要な勉強法の一つだ。
そして観戦記や棋譜を読む時には、時々は、実際に盤に並べて欲しい。頭の中だけで見ていたり、あるいは、パソコンの画面上だけで見ていた時と、実際に盤に並べたのではその見方が違うからだ。
もっとも最近は、実際の駒や盤を持っていなくて、ネットでしか指したことがない、という人もいるだろう。そういった人達まで、「盤に並べる」必要があるかどうかまでは分からない。でも、もしネットで指していて、少しも上達しないと言う人は、一度、盤と駒で棋譜並べをしてみたらどうだろう(指す相手がいれば指した方がもちろん良い)。今までとは違った感覚を持つことができるかもしれない。

(3)観戦する(テレビ将棋対局や講座を見る・強い人の将棋を見るなど)

プロの将棋対局を見たり、将棋講座(NHKやスカパー)を見ることも有益な勉強法だ。観戦するときは、次の一手を一緒に考えてみることで、よりすぐれた手の発見、本筋が何かを考えられるようになる。
講座も本と違って、見て聞いた方が分かりやすいのも当然だろう。自分の棋力と外れているものは仕方ないが、その講座が棋力に合っているものなら、見逃したくはない。


さて、将棋上達の一般論を見てきたが、これらは全ての人にそのまま当てはまると言うものでもない。
そこで、ここでは、その棋力や環境に合わせて、(上のことをふまえた上で)簡単な助言を与えておきたい。

(1)将棋を覚えたばかりの人

覚えるべきことはたくさんあるが、まずは将棋を楽しめるように、実戦主体でいいと思う。そして、その実戦も、上で言っているように、1局1時間もかける必要はない。最初のうちは駒の利きを見落とさないことが大切なので、数多く指すことで、慣れることが必要だからだ。

(2)初級・中級者

やはり実戦をメインにもってきていいと思うが、同時に、やさしい詰将棋を解いたり、テレビなどのプロ対局も見て欲しい。プロの対局とその解説は、まだ難しいと思うが、その指し手を見ることで、将棋の本筋を感覚的に捉えることができるようになるし、詰将棋を解くことで、少しでも読みの力がつけば、上達の一助になるからだ。

(3)初段間近から有段者

上にあげた総合的な勉強方法が必要だろう。但し、今まで順調に伸びてきている人は、今までの勉強法をそのまま続ければいいし、もし棋力が停滞して困っているなら、上にあげた勉強方法で、あまりやっていないことを試してみるのもいいと思う。

(4)序盤・中盤・終盤

特に棋力には関係ないが、将棋にはその進行度からよく序盤、中盤、終盤と言う風に分けて言われることが多い。この中で、中盤がへたとか、終盤が甘いとか言われることも多いので、その強化方法をあげておこう。

序盤・・・定跡の勉強で強化する。但し、初級者のうちは、「駒損をしないように駒組みを続ける」という意識があれば特に序盤の勉強は必要ない。定跡をこれから覚えようとする人は、最初から広範囲に覚えるのではなく、まず自分が指してみたい一つの戦法だけを深く勉強する方がいい。

中盤・・・棋譜並べと仕掛け前後の次の一手などで強化。形勢判断などもっとも難しい箇所だが、プロの棋譜を並べたり、次の一手や強い人の将棋を観戦することで、仕掛けの是非を的確につかめる力を手に入れよう。また、読みの力も必要なので、詰将棋も中盤の力になる。

終盤・・・詰将棋が一番だが、級位者には、やさしい必死問題の方が速効性はあるかもしれない。終盤はまさに「読み」だけの問題。数多くの詰将棋を解くことと、やはり強い人の将棋を見たり、棋譜並べで、終盤の寄せ方を勉強すれば役に立つだろう。


メールや掲示板でいただいた質問の中に、将棋上達に関係するものがあったので、ここに追記しておきたい。(2002年11月13日)

(Q1)級位者でも指しやすいような戦法はないのでしょうか?

振り飛車は初心者には簡単だが、藤井システムは一般には難しいと言われている。それはたとえば、普通の振り飛車なら、玉を美濃に囲って、後は相手が攻めてくるのを待って、反撃すればいいのに対し、藤井システムは、相手の動きに合わせて手を変えていかなければならないからだ。
それだけ勉強しなければならない事が多いからだが、だからと言って、普通の振り飛車だって、勉強しなければ簡単に勝てる訳ではない。また、居飛車でも、一発で有利不利になりやすい横歩取りに対して、矢倉が指しやすい戦法かと言うとそんなことはない。

人には、それぞれ向き不向きがある。定跡形が好きな人もいれば、乱戦の好きな人もいる。どれが指しやすいか、どれが自分に合っているか、いろいろと試行錯誤を繰り返して、自分の得意な戦法を見つけていって欲しいと思う。

(Q2)複数の戦法を覚えた方がいいか?一つの戦法を極めた方がいいか?

これについても人それぞれです。強くなった人(あるいはプロ)を見れば分かるように、なんでも指す人もいれば、一つの戦法を極めた人もいます。どちらがより良いかと言うことは一概には言えないでしょう。

ただ、一般的に、初心者へのアドバイスとして、「得意戦法を見つけなさい」とは良く言われることです。それは、得意戦法を持つと、勝ちやすくなり、勝てると面白く、もっと勉強しようとする気になるからでしょう。
そう言う意味では、最初のうちは、一つの戦法を勉強していった方がいいのかもしれません。


さて、将棋上達の一般論を見てきたが、これらはとりたてて新しいことでもないし、今までによく言われてきたことをまとめたに過ぎない。実際、将棋の上達に近道はない、と考えた方がいい。

将棋にも確かに適性はある。同じことをやっていても、強くなる人とならない人がいるのも事実。また、年齢的にも、若い人ほど強くなる率もスピードも違うのが事実だ。若くて適性があれば、指すごとに強くなる人もいれば、何年やっても、少しも強くなれない人もいる。だが、楽しく将棋を続けて、強い人の意見を素直に聞くことができれば、少しずつでも強くなっていける、と思う。

私自身、将棋にハマったのが、かなり遅かったのだが(高校生の時、詰将棋に、大学卒業後社会人の初め頃、指し将棋に)、今思い返してみると、「強くなりたい」と思ったり、どうすれば強くなれるか、などと人に聞いた記憶はない。

おそらく、同じくらいの棋力の人達にも共感してもらえるのではないかと思うが、ひたすら楽しく詰将棋を解いているうちに、あるいは、夢中で将棋にどっぷり浸かっているうちに、知らない間に棋力がついていたと言うのが本当のところだ。

だから、プロになるというのなら話しは別だが、アマチュアで、もっと強くなりたいと言うだけなら、将棋を楽しみ、それを長く続けることが一番だと思う。面白ければ、必然的に、将棋に接する時間も長くなる。強くなろうと言う意識も必要ない訳ではないが、それ以上に、面白いと思う気持ちが大切で、それを継続することでさらなる上達が望めるのではないかと思う。

2002年10月04日作成

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