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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年9月19日出題)

第566問(2016年9月18日 豊島七段-久保九段戦)
(問566-1)
先手豊島七段、後手久保九段で戦型は後手のゴキゲン中飛車対先手の超速。駒組みの後、先手が▲3五歩と開戦、これに反撃し難解な中盤戦が始まった。その後△1五角といういわゆる”幽霊角”にこれを受けず、先手は歩得、後手は馬を主張する展開に。しかし、さらに進み△5八歩とと金作りが確定したところでは後手の指し手が分かりやすくなりやや有利となった。対して先手は端を突いて勝負に出た数手後が下図となっている。今、▲8六桂とこれも手筋である控えの桂を打ったところ。ここで後手久保九段の指した一手は何か?最も普通の”しっかりした受け”と言ってしまえばこれしかない。

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問566-2)
終盤、端から殺到する先手に対し、後手の久保九段は、歩の取りになっていた銀を別の歩の頭に移動させるという奇手を放った。これでさらに駒得になった後手が優勢となり、下図は△5九歩成で、と金・馬の活用と△7六桂を見せた所。これに▲9四歩なら△8五桂で後手必勝。なので、歩ではなく▲9四桂と王手で応手を聞いたのが下図。これは王手で、しかも取る手はないから玉の逃げ場所は4通りしかない。と言っても実際は△7一と△9二のほぼ二択。久保九段はどちらを選択したのか?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問566-1解答)「桂頭の銀、定跡なり」
この局面、▲9四歩を打たれても攻め合って勝てると思えば受けない手も考えられる。また、銀を温存しておきたいなら、△8四歩と突き、▲9四歩△同香▲同桂に△8三玉というような受けも(香損するけれども)あることはある。ただ、実際にこの局面なら、久保九段も打ったように△8五銀と受けるのが自然だ。「桂頭の銀、定跡なり」という格言があるように、銀で受けておけば▲9四歩には△同香▲同桂△同銀で何でもない。受けの最も基本的な手筋と言える。

本譜は、▲9七桂と跳ね、△8六銀にこれを取らず(取ると△8四歩で桂がさばけない)、▲8五桂と跳ねたのが勝負手。後手も玉頭だけに怖いところもあるが、その△8六銀を△7五銀と歩頭に引き戻したのがハッとする一着だった。▲同歩に△7六桂と角金両取りをかけ、後手優勢のまま終盤戦が進行。そして第2問の王手へと続く。


(問566-2解答)「勝敗に直結する玉の逃げ方」
この問題図、何も考えなければ△7一玉と広い方へ逃げるのが自然だ。△9二玉と横へかわすのは、飛車か金を渡した瞬間に詰めろとなり、相当怖い。ただ、逆に先手玉が必死であれば、△9二玉と「ゼ」の方へ逃げる方が自然とも言える。つまりこうした終盤においては、経験ももちろんあるが、一つ一つは常に読みの世界。その局面ごとに正確に勝ちを読み切り、指す必要がある。そしてこうした逃げ方により、それはそのまま勝敗に直結することが多い。

本譜は、▲4二銀があり、確実に飛金のどちらかを取ることが出来る。だからなおさら△9二玉は怖いとも言えるが、もちろんそれも久保九段は読み切り。▲5一銀成と飛車は取られても、△7一金と寄った局面は後手玉に詰めろがかからないので大丈夫という訳だ。逆に先手玉は△5八とから△5七とで、受けがなくなっている為、この後数手で後手久保九段の勝利となった。

なお投了図から後手の(△5七の)と金を払った局面、それ自体は先手玉に詰みはないのだが、それを修正して詰むようにしてみたので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。

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