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NHK杯に見る受けの手筋

(2018年8月13日出題)

第661問(2018年8月12日 松尾八段-山崎NHK杯選手権者戦)
(問661-1)
先手松尾八段、後手山崎NHK杯選手権者で、戦型は相掛かり戦。ただしすぐ先手が歩を切りに行かず、△7四歩を待ってその歩を取る最近流行の形で局面は進んで行った。戦いは、後手が△6五銀と角頭の攻めを見せたところから。後手の金銀が中央に三枚出る形でさすがにまとめきるのは容易でないと思えるところだが、うまく均衡を保ち形勢不明のまま終盤戦へ。そして下図、今△8九飛成と成られ王手をされている。受け方は三通りしかないが、どれが最善か?ここで指された先手松尾八段の指した次の一手は?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問661-2)
上図から壮絶な終盤戦が繰り広げられた。受けの問題としても取り上げたい手がたくさん出て、たとえば76手目△3二金打、105手目▲3八銀、115手目▲3九歩など。そして迎えた最終盤。先手玉は部分的に受けはないが後手玉との兼ね合いでまだ凌ぎ筋のある可能性はある。今△5六龍を嫌って王手しながら龍回りを防ぐ▲6六飛を打ったところ。ここでどう指すか?後々まで読みを入れて指された後手の次の一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問661-1解答)「先手を取らない場合Part1-金底の歩」
持ち駒が歩しかないので金を引くか銀を引くか歩を打つかしかない。終盤では先手を取るために金で大駒に当てるということは良くある。しかしここでは▲7九金と一旦は先手を取っても、△9九龍の後、7筋にも8筋にも歩が利く為、△7八歩などの手段を与え、かえって攻められるのが早くなってしまう。このような時は、しっかり歩で守っておくのが固い。これでも(後に)△8七歩の攻めや△8七銀不成(本譜)などの攻めはあるが、金を引いて△7八歩と叩かれる局面と比べたら数段遅くなっている。

本譜この後、難解な終盤戦が長く続いた。そしてようやく後手が残したかと思われる局面が第2問だが、それほど明快な局面ではなく、まだまだ難解な最終盤戦が続いた。

(問661-2解答)「先手を取らない場合Part2-駒を渡さない」
△5六龍を受けた飛車だから、とつい△6五歩とか△6三香とか飛車取りを考えてしまいがちだ。しかしそれは本譜を見れば分かる通りかなり危険。▲3七銀と馬を取った時、いきなり詰めば何の問題もないが、ここでは僅かに足りず△同龍と取る一手。そうなると、角金香を持たせた上に龍の位置も悪い。先手は▲6三飛成から切り込むのが最後の勝負手。という訳で、ここに香を打っていると余分に香を渡してしまうことになる。だから歩が正解ということ。

本譜は王手で▲5五馬から▲3七馬と龍を抜くことには成功した。しかし後手玉を狭い場所に寄せた後に最後に龍を取る形になれば先手の勝ちだが、後手玉はやや安全になり、逆に駒をたくさん渡した為、先手玉がすぐ寄る形になってしまった。結果、二転三転し160手という大熱戦の本局は後手山崎NHK杯選手権者の勝利となった。

なお上図の局面、後手がもう一枚桂を持っているだけで、▲3七銀と馬を取った瞬間に詰む。余詰めを消す為若干駒の配置を変えたが、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。
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