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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年8月19日出題)

第711問(2019年8月18日 稲葉八段-里見女流五冠戦)
(問711-1)
先手稲葉八段、後手里見女流五冠で戦型は先手の居飛車穴熊対後手向かい飛車。先手は▲4六銀▲3七桂型で後手の攻めを封じてから左美濃〜銀冠〜穴熊へと駒組みを進めたが、後手も理想の居飛穴を防ぐ為、△8五歩から動き形を崩した。その後、どのように動くか、難しい中盤戦から終盤戦へ突入。途中、先手の角頭を攻めポイントを上げたかに見えたが実際は互角だったようだ。下図、先手が▲2一とと桂を取り、△5八歩成に▲4六角と上がったところ。ここで後手はどうしたら良いか?後手の指した次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問711-2)
後手の攻めに丁寧に応接し、少しずつ先手が良くなってきた。しかし今、△5七角と飛車取りに打ち込まれ、同時に△6八とを見られている。次の一手として出されればやさしい一手だが、自分の実戦だと手拍子に、という局面かもしれない。ここで指された先手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問711-1解答)「両取りを避けつつ、遊び銀の活用」
▲5五桂自体が極端に厳しいという訳ではないが、△5四銀と遊んでいる銀を中央へ使うのは自然な一着。先手は▲2四飛から飛車は成れても、成っただけではまだ後手玉は遠い。と言って後手も6筋の歩を切って垂らすことは出来るが、動くと反撃も厳しい。といろいろな要素のある局面で、実戦△5四銀は駒の活用という本筋の一着と言えそうだ。

本譜は▲4四銀と出た手に△4五歩から角を追い、▲3五角△3四歩▲2四角に△2一飛。対してじっと▲5五歩で銀を捕獲、後手が暴れてくるのを待った。そして、飛車を切り△5七角と打ったのが第2問である。

(問711-2解答)「飛車を引いて受けに使う」
飛車は取られてはいけないので、▲2二飛成あるいは▲2一飛成を考えるのは自然。しかし△6八とと来られると攻め合いになりこれは良い勝負。実戦、▲2八飛と引いたのが冷静な一着だった。△6八とを防ぎ、場合によってはと金を外す手も見ている。飛車は成れる時は、ほとんどの場合成った方が良い。但し、成った手がそれほど大きな手ではなく(相手陣が固いなど)、別の攻め筋があり(この場合▲5四歩〜▲5三歩成)、なおかつ相手の攻めが早い時など特別な場合にはこのように引く手が良い手になるということを覚えておきたい。(先週の藤井聡太七段の△8二角も別の意味で成れる角を成らなかった)

本譜はこの後、後手もなんとか先手陣に食い付いていったが、冷静に速度を見切った先手が最後は後手玉を即詰みに討ち取り、先手稲葉八段の勝利となった。
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