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NHK杯に見る受けの手筋

(2020年7月26日出題)

第755問(2020年7月25日 長谷部四段-畠山鎮八段戦)
(問755-1)
この対局も新型コロナの影響で深夜に放送されている。先手長谷部四段、後手畠山八段で戦型は相矢倉戦。序盤の駒組みによっては急戦になる可能性もあったが、お互いじっくり組み合い昔ながらのガップリ四つの矢倉戦となった。後手の四枚矢倉に対し、▲5五歩〜▲4五歩と先手が先攻、しかし△4七歩から△1六歩と後手も逆襲し、難解な中盤戦が繰り広げられた。下図は9筋を突き捨て、今△9七歩と垂らされたところ。どのような戦型でも端攻めは常に出てくる筋。ここではどう指すのが良いか?また、端歩を垂らされた場合、どのように考えるべきか。先手の指した次の一手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問755-2)
上図から形勢が微妙に揺れ動きながら中盤から終盤に入った。途中、▲4一角から▲6三に両取りで馬を作り、さらに後手の手に乗り△1七のと金を幸便に飛車で払うことが出来ると少し先手が残りそうな雰囲気に。そして迎えた最終盤、△6六歩と急所の詰めろに対し、「後手玉は詰みでしょ!」とばかりにバサッと▲3六飛と切った。△同銀に▲3五香と打ったのが下図でどう応じても後手玉は相当危ない。しかし、何とこの局面、後手玉に詰みはなかったらしい(柿木で検証済)。ここからとん死しない為の次の三手は何か?すべての変化を完全に読み切れなくても、こう逃げるのが最も安全そうという筋はあり、実際ここでもそれが正しい。ここからの進行を三手まで。
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問755-1解答)「七段目への垂らしは取るのが基本」
端歩をどうするかは常に回りの状況次第ではあるが、そうは言っても基本はあり、まずはその基本から読みたい。たとえば序中盤の△9五歩(以下美濃における△1五歩も同じ)は取るのが基本。そして、△9八歩と叩かれた場合は、8〜9割取るのが正しい。今回のように△9七歩と七段目の垂らしに対しても、6〜8割は取る場合が多いと思う。これに対し、△9六歩の垂らしの場合は逆に8割くらいは取らないことが多い。それは手抜きをした時の自玉への脅威の差ということになる。もちろん、序盤、中盤、終盤においては考え方が変わるし、その局面によっても正解は変わるので、丁寧な読みと経験が必要になる。

本譜は、先手も▲1二歩〜▲1三歩と香頭を叩き反撃に出た。そして激しい攻め合いは僅かに先手に分があると思われたが、「詰み」との判断で飛車を切って行ったところに落とし穴があり第2問に続く。

(問755-2解答)「合駒を取らせてかわす筋」
ここでの正解は、△3四金▲同香に△4四玉。終盤では読みがすべてなので、まず逃げる手は簡単に詰みと読み切る必要はある。難しいのは合駒とそれを取られた時の応手だが、すべてを読み切れなくても、このような中段玉で大駒を渡すのは危険という”勘”と▲3四同香に「こういう場合はかわす方が安全」という”一般的なセオリー”を知っていれば正解は指せそうだ。もちろん、30秒でこの変化以外はすべて詰みと読み切れる棋力があればそれに越したことはない。

本譜は、飛車を切って詰まないとなると当然逆転する訳で、それでも最後、際どい勝負に持ち込んだが再逆転には至らず、後手畠山八段の勝利となった。
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