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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年6月28日出題)

第806問(2021年6月27日 屋敷九段-戸辺七段戦)
(問806-1)
先手屋敷九段、後手戸辺七段で戦型は先手の超速対ゴキゲン中飛車。後手が△5六歩から飛車先を切った瞬間、▲4五桂△4二角を決め、▲5五歩と飛車の退路を断ち、研究+読みの難解な終盤戦へ突入した。そしてその後はずっと後手の攻めが決まるか先手が受けきれるかの勝負は続いていくが、下図はその始まりの局面。今、△5三桂と銀の両取りがかかっている。ここで先手はどのように指したか?先手の指した次の一手は何?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問806-2)
戦いが始まってから評価値は先手有利の60%台を推移していた。しかし、人間的には正確な受けを続けなくてはならない先手が大変そうに見える。下図は、飛車取りが残ったまま、今△5八歩成と金を取られたところ。ここで先手の指した手は何か?次に飛車を取られると切らすどころか攻めも早くなるので、一旦は逃がすしかない。先手が飛車を動かした場所は?5つしか動ける場所はないので五択となるとそこまで難しい訳ではないが、指された瞬間、思わず「なるほど」と感心した一着。先手の指した次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問806-1解答)「銀を残す位置で逃げる駒を決める」
銀を取られても何かに当たっている訳ではないので、まず「両取り逃げるべからず」と▲1六歩などこちらを急ぐ手も見える。しかし、その瞬間、△5七歩と叩かれると、銀取りを残したまま△5八にと金を作られてしまう。そこで▲5四銀右とこちらの銀を逃げたのが実戦。解説でも言っていたように、桂で銀を取られてそれを取り返した局面を考えると、残しておきたい銀の反対側を動くことになる。▲6五の銀を逃げると、△4五桂▲同銀となった時に、銀が離れた位置になってしまうという訳だ。

本譜は、後手の攻めが入るか凌げるかというギリギリの攻防が続いた。しかし、先手も間違えることなく、評価値は先手有利のまま終盤戦は推移し、△5八歩成の局面は先手優勢68%。とは言え、一度でも間違えるとたちどころに逆転する難しい戦いが続いているのが第2問である。

(問806-2解答)「場合の好手-捕獲されに行く飛車」
ここで▲3七飛と寄ったのが驚きの一着。普通、飛車や角は、捕まらないよう広い場所へ逃げるのが鉄則。この場合であれば、▲2六飛や▲1七飛など。もちろんそれでも悪いと言うことではないが、▲3七飛はより良くしに行った手で、△2七金なら飛車は死ぬが、▲5四歩から▲5五角がある(その筋を防ぐ為、先に△6八金▲7七玉を決めても、角を持っている)。そして△2七金にだけ対応が出来ているなら、単に逃げるより▲3七飛と銀取りに逃げた方が得と言うわけで指されて見れば納得の逃げ方。

本譜は△6八金から△5七とと玉に張り付いて行ったが、▲3八飛と銀を入手。△7八金で先手の角は捕まるものの、その瞬間に▲6四角から美濃を攻めると、(感想戦では)その後の受けに問題があったと言っていたが、実戦は一気に美濃を攻略、先手屋敷九段の勝利となった。
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