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NHK杯に見る受けの手筋

(2022年3月21日出題)

第843問(2022年3月20日 松尾八段-豊島九段戦)
(問843-1)
本局は決勝戦。先手松尾八段、後手豊島九段で戦型は相掛かり戦。最新形の駒組みから先手が角道を開けた瞬間、その横歩を狙い後手が動いた。対して、▲6六歩と角道を止める趣向を凝らしたが結果としてはあまりうまく行かなかったようだ。後手の飛車の動きを押さえられず▲6七玉と自ら玉で受けたものの、下図は今△6五歩と玉頭を突かれ危険な状況になっている。ちょっと収拾のつかなそうに見えるこの局面を先手はどのように凌いだのか?先手が指した次の一手は何?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問843-2)
一気に終わってもおかしくなさそうな上図からギリギリで凌ぐと再び駒組みへと戻った。ただ後手が一本取った形で、AIの評価値は常に後手有利の60%台を推移。その後、先手の飛車が▲9九飛と一瞬働きのない所へ行った瞬間△6五桂と跳ねてさらなるポイントを取りに行った。対して先手も今▲3五歩と角頭を突いたところ。ここではある意味どう応対しても悪くはなさそうだが、受けとしての応手は二択に見える。ここで指された後手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問843-1解答)「角をさばかせない辛抱の一着」
ここで▲7七歩と打ったのは驚きの一着だが、つぶされない為の唯一の手かもしれない。失敗したと思った時に、何とか挽回しようと▲7六金とか▲8六金など飛車を取りに行くと△6六歩から逆に一気に敗勢に陥る。▲7七歩は先手の角も使えなくなるので、普通はあり得ない手だが戦況を長引かせて態勢を立て直そうとする辛抱の一着だ。実際、ここまで低姿勢に受けられると一気の攻めはなく、再び駒組みに移った。

この後は、△6六歩▲5八玉△8五飛▲8六歩△8一飛から第二の駒組み。もちろん一歩得で陣形も良い後手が有利なのは間違いないが、はっきりした戦果を上げるのはこれから。AIの評価値も60%台を推移し、まだ動き方の難しい中盤戦は続いた。そして、一瞬の隙を突いて後手が桂交換をした直後が第2問である。

(問843-2解答)「角頭を銀で守る」
ここは△同歩と取り、▲3四桂に△3一玉▲2二桂成△同玉と銀桂交換に甘んじる指し方も有力そうで、その場合は△3五歩の位と先手の歩切れが大きいと主張することになる。実際そう指しても十分そうだが、実戦は△2三銀と手堅く上がった。角頭を守るならもっとも自然な一手で、▲3四歩に△同銀▲4六桂△2三銀と進み、何事も起こらない堅実な指し方。

本譜は、飛車を2筋に振り戻し▲2五歩を見せたが、じっと△3五歩と打った後、△5五桂が入ると先手陣はあっという間に受けがなくなり、後手豊島九段の勝利。第71回NHK杯選手権の優勝を果たした。
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