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(六枚落ちの話)
第一話 六枚落ちについて

さて、六枚落ちの定跡を解説する前に、六枚落ちを指すときの、心構え、どのようなことを基準に指し手を進めていったら良いかを考えておこう。

まず、将棋を覚えて間もない人(将棋センターで5級以下の人)には、平手の場合でも、次のことを、口を酸っぱくして言うことが多い。

一つ目は、駒損をしないこと。駒得を出来る限りするように指し進めていくことだ。
二つ目は、駒を働かせること。特に、大駒を働かせられるように、指し手を進めていくことだ。

この二つをメインに、指導対局を行うが、駒落ちの場合は、どうであろうか。
もちろん、六枚落ちにおいても、この二つのことは非常に大切なことだ。しかし、重要度が、六枚落ちになると、やや変わってくる。

六枚落ちを指す上で、大切なことは、次の四つである。そして、重要度は、(1)から順に低くなっていく。

(1)大駒を働かせること。
(2)と金や成香を作り、使うこと。
(3)駒損をしないこと。
(4)手損をしないこと。

駒損をしないことは、六枚落ちでももちろん大切なことだが、それ以上に大切なことが、大駒を働かせることと、と金を作ってこれを使うことである。この四つのことを常に考えながら、定跡を覚え、六枚落ちを指すことで、筋の良い将棋の基本が身に付いていくものと思う。

六枚落ちは、ご存じのように、最初から上手には、飛角桂香がない。このことで、どこが弱いかを見てみると、当然、両端が弱いと言うことになる。

しかし、もしそのことを知らなくて、平手の定跡しか知らなかったとしても、駒落ちが指せないと言う訳ではない。
以前、六枚落ちの上手を持った時、しっかり矢倉に組んできた4級の子がいた。特に端に狙いをつけずとも、その後の指し方がしっかりしていれば、これでも、充分なのだ。

それでもせっかく六枚落ちを指せる相手がいるならば、定跡を覚えておいて損はない。駒落ちを嫌う人は、上手でも下手でも結構いるが、六枚落ちのようなものでさえ、突き詰めると、実は予想以上に面白いのである。

僅かの手順の違いで、端が破れたり破れなかったりする。下手の攻撃に、金銀だけを巧妙に使って逆襲する。上手にとっても、考えられる要素は思っている以上に多いのだ。
当然、習う側にとっても、有益なことは多い。特に、と金の使い方と、大駒の使い方。この二つは、平手の将棋へと発展していけるだろう。

もし、六枚落ちの上手を持ってもらえる相手がいるならば、是非、基本の定跡を学び、実際に使ってみて欲しいと思う。

ところで、講座を始める前に、もう一つ、六枚落ちについて、私が以前から考えていたことを述べておきたい。

六枚落ちの上手を持って指したり、検討に入ったりしていて、よく私が使う言葉に、「まだ局面は良いけど、手合い差を考えると、もう勝つのは難しいな。」というのがある。

六枚落ちと言うのは、当然だが、最初から上手に、飛角桂香がない。これは、非常に大きなハンデだ。仮に、これを点数に置き換えて、最初から下手は、100点の持ち点を持っているという風に考えてみよう。

そして、下手が、緩手(かんしゅ:ぬるい手)、疑問手(ぎもんしゅ:ちょっと悪い手)、悪手(あくしゅ:明らかに悪い手)を指すたびに、マイナス点をつけ、100点から点数を引いていくのだ。

そうして、0点になった時、局面は互角になる。ここからは、もう同じ棋力の人同士が指しても、どちらが勝つか分からないと言う訳だ。

しかし、駒落ちの場合は、もう一つ分岐点がある。それが、先ほど言った、「局面は、まだ良いのだが、手合い差を考えると勝つのは難しい」時点だ。私は、この時点を30点においてみた。
つまり、持ち点が30点を切った時点で、局面はまだ有利(同じ棋力の人同士で指せば、まだ下手が勝てる)でも、六枚落ちと言う手合い差(棋力差)を考えると、もう、勝つのは難しくなっている、ということだ。

今後、この六枚落ちの話の中では、いろいろなところで、この点数を出していきたい。どの手が、どのくらい悪いのか、点数をつけることで、手の善悪をきちんと捉えられるのではないかと思うからだ。

では、早速、次ページで、まず、9筋攻めから解説しよう。

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