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六枚落ち定跡(9筋攻め)の再現

(六枚落ちの話)
第二話 六枚落ち定跡−9筋攻めpart1

では、早速六枚落ちの定跡についてみていこう。
このページには、分かりやすいように、その局面ごとに図面を貼っていくが、それ以外に、左上の「六枚落ち定跡の再現」をクリックすると、別ウィンドウにその手順が再現できるようにしておいた。ウィンドウの大きさを調整し、並べて手順を動かしながら読んでもらえればと思う。また、文中に(変化参照)とあるのは、この再現の方に変化も入っていると言う意味である。
六枚落ち定跡、9筋攻めを見ていく。

図は、△3二金▲7六歩△7二金とした局面。ここで、どう指すか?六枚落ち定跡、9筋攻めの基本となる最初の一手は、▲6六角である。
つまり、次に▲9三角成と、角を成るぞと言う訳だ。これに対し、当然上手は、角を成らせないために、△8二銀と上がる。そこで、第二弾、▲9六歩からの端攻めを見せるのだ。

図では、先に▲9六歩と突いても同じになるように見えるかもしれないが、手順が変わると、まったく違った局面になってしまうのが将棋だ。
図ですぐに▲9六歩(変化参照)は、△8四歩と突かれ、▲9五歩に△8三金と守られてしまうのである。

さて、下手の▲9五歩に対し、上手は△6四歩と突いてきた。実は、この手は、油断のならない手だ。もし、上手が何もしてこないなら、▲9四歩△同歩▲同香で端が破れる。この時、9三へは下手の駒の方が多く利いているからだ。

しかし、上手の△6四歩と突いた手に構わず、▲9四歩(変化参照)といくとどうなるか。△同歩▲同香に△6五歩と突かれてしまうのである。

そして、角をどこへ逃げても、次に△9三歩と打たれ、香を取られてしまう。つまり失敗なのだ。
では、どうすべきだったか。答えは簡単。△6四歩には、角を9三からそらさずに逃げられるように▲5六歩と突いておくのである。この△6四歩に対する▲5六歩は、ワンセットで覚えておいて欲しい。

しかし、数多く六枚落ちをやっていると、知っているのに、手拍子で▲9四歩と突いてくる人もいる。

あなたが下手の時も、うっかりやってしまうかもしれない。
こんな時、「ああ、しまった!」と思って、さらなる疑問手を連発してはならない。実は、定跡を少しぐらい外れたからと言って、簡単に上手がよくなる訳ではないのである。何と言っても、最初から飛角桂香がないのだから。

では、ここでの(左図)最善手を捜してみて欲しい。もちろん、上手は次に何でも△9三歩を打ってくるので、その後まで読みを入れて、である。



(考慮タイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
ところで、△6四歩に▲5六歩と突かず、▲9四歩から▲9四香といってしまった手はどのくらいの疑問手なのだろう?
まだ、大丈夫とは言っても、やはり香損も大きいのである。したがって、この手には、マイナス20点をつけ、持ち点が80点に減ったとしておきたい。

そして、ここで、さらなる疑問手、▲8八角を指してはいけない。理由は正解からみていこう。ここでの正解手は、▲5五角だ。△5四歩には▲6四角と出て、次の▲5三角成と▲9二香成の両方が残ってしまう。したがって、▲5五角にも△9三歩しかないが、▲同香成△同銀に▲9一角成と馬を作れる。

ここで、大事なことは、馬を作ったと言うこともあるが、上手が歩切れだと言うことにより大きな意味がある。つまり、次に▲9八飛が厳しい狙いとなっているのだ。

もし、先ほどの△6五歩に▲8八角と引いたらどうなるか。△9三歩▲同香成△同銀で、次の狙いがない。▲9八飛と回れない訳だ。したがって、ちょっと極論になるが、この局面(▲8八角と引いた図)はもう下手が勝つのは難しくなっているとも言える。▲8八角は、大駒の働きを自ら阻害した手で、マイナス30点の手。先ほどのマイナス20点と合わせて、すでに持ち点は50点にまで減ってしまっている。玉が詰みかどうかという終盤に、50点の持ち点があるなら逃げ切りも考えられるが、序盤のうちに、これだけ差を詰められてしまったら、ほとんど勝ち目がないと言えるだろう。

では、本手順に戻ろう。

上手△6四歩の後、▲5六歩△5二玉に、いよいよ▲9四歩△同歩▲同香と進んだ局面だ。ここで上手は、△8四歩と指して来る。

この△8四歩は、上手の常套手段だ。ここで突く手と、もっと前に突く時もある。そして、その時々によって、下手の応手も変わってくるのである。

△8四歩をもっと早く突く手に関しては、9筋攻めpart2で、あらためて解説したいと思うが、ここではどうしたら良いかを考えて欲しい。
△8四歩はタダなので、角で取るのか、それともそれ以外の手なのか、と言うことだ。

(考慮タイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
まず、▲8四角と歩を取るとどうなるかを考えてみよう(変化参照)。
これには、上手は、△8三金と上がる。そして▲5七角(ここに引かないともっと悪くなる)に、△9四金▲1三角成と進む。

この図自体は、香を取られたものの、馬を作っているので、極端に悪いと言う訳ではない。したがって、▲8四角は、マイナス30点くらいの手だ(持ち点70点)。
しかし、もし実際に、指導対局をしていて、この局面で▲8四角と歩を取ってくる下手なら、△8三金▲9五角△9四金▲7七角と進む可能性もある(実際、こう進んだ時もあった)。
こうなってしまうと、角も成れない上に、手損までしている。すでに持ち点は30点近くに減り、まず六枚落ちでは勝てないだろう。

△8四歩に対する正解は、▲9二香成だ。▲9八飛と先に回っても、正解としたい。そして、△7三銀に▲9八飛。いずれにしても、この飛車まわりが六枚落ちの主眼の一手である。

端を破り、飛車をまわり、成り込む。ここまでが定跡で教えるところである。さて、ここまで下手は、定跡通りうまく指してきた。ここで上手は△4二銀と上がったとしよう。ここでも次の一手を考えて欲しい。

(考慮タイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「あれ?飛車成りじゃダメなの?」と思ったあなたは、決して筋が悪い訳ではない。また、▲9三成香を考え、▲9四成香から▲8四成香を考えたあなたも、強くなれる要素は充分持っていると言える。

しかし、正解は、▲8一成香。本来、と金や成香、金などは、引いて使った方が利きが増え、本筋である。だから▲8一成香に気づかなかったとしても、がっかりすることはない。

ここでの▲8一成香は「場合の手」である。つまりこの局面だから成立する手であり、多くの場合は、二段目にいる香を一段目に入るのは、良い手とは言えないのである。

この場合のみ、なぜ良いかと言うと、▲9三飛成と入った局面を考えて欲しい。次の指し手が難しく、結局▲8一成香と入り、▲9二龍とするしかないのである。ならば、先に▲8一成香とすれば、一手早く▲9二龍と入れると言う理屈である。

さて、いよいよ端を破り、駒損もせずに、龍まで作った。今、上手は7二金を守るため、△6三玉と上がったところだ。ここで、やはり次の一手を考えて欲しい。

(考慮タイム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
六枚落ちの場合、端を破っても、その後の指し方を知らないと、玉を詰ますまでには結構たいへんだ。
なぜなら、上手には駒がないので、取れないからだ。駒が不足している時、どうするか。それには二つしかない。つまり、自陣の駒を応援に出すか、と金を作るかである。

▲7七桂とか▲7八銀とか自陣の駒を応援に出そうとする手は、基本的には悪くはない。しかし、手数がかかり、それまでに、上手もいろいろと紛れる手を指してくるだろう。

ここは、▲9四歩が絶好の一手だ。△5三銀に▲9三歩成。いっぺんに9三に金が出来たのだ(しかも上手に取られても相手には歩にしかならない)。これで、上手はどうしようもない。

後は、このと金と成香、この二つを、上手の金銀と交換するように指せば、ゴールはすぐそこだ。この局面、下手は、ポイントを一つも減らしてはいない。したがって、まだ持ち点は100点のままだ(実際には、▲9四歩は好手なのでプラス30点で130点くらいに差が開いていると言ってもいい)。

「駒落ち定跡」には、この後、詰みまで手順が解説されているので、もっと勉強したい人には読んでもらいたいと思うが、もう間違える箇所はあまりないだろう。あるとすれば、タダで、駒を捨ててしまうような勘違いだけだ。

実際、六枚落ちくらいの将棋を見ていると、よくタダで捨ててしまう場面に出会う。たとえば、図から△4二金に▲7一成香と寄り、△同金と取られて、はじめて何も取れないことに気づく、とか言った感じだ。

終盤へ行けば行くほど、駒のタダ捨ては、罪になる。マイナスポイントも大きくなるということを知っておこう。
六枚落ち9筋攻めの基本であるpart1は、ここまでだ。次回は、上手の紛れの一手、△8四歩の早突きについて解説しよう。

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