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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年5月27日出題)

第700問(2019年5月26日 糸谷八段-田村七段戦)
(問700-1)
先手糸谷八段、後手田村七段で戦型は力戦調の相居飛車。先手が▲3六歩▲3七銀と早めに形を決めて後手の様子を見たのに対し、堂々と△6二銀△5四歩と指した為、▲3五歩から早い仕掛けを敢行した。この仕掛けは成立していたのかもしれない。下図はその直後。▲3四歩と位を取り、今▲3五銀と位の確保を図って銀を進出したところ。▲2四歩〜▲2八飛が見えておりその時の対応も考えておかなければならない。ここで指された後手の次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問700-2)
序盤で上げたポイントを中盤でさらに拡大し、一時は決め手もあったかと思われた(感想戦で)。しかしそれを逃してもなお先手優勢。後手もなんとか紛れを求め、△1九角成から今△5五歩と飛車取りに歩を打ったのが下図。この飛車はどこへ逃げても取られるので、こうした場合は、受けずに攻めるのが普通だが、ここで指された先手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問700-1解答)「乱戦に活路を見いだす」
ここで△5五歩と突いたのが実戦。「大駒は近づけて受けよ」の格言の意味も多少はあるが、むしろ5五の歩を取らせることで乱戦に誘ったという意味合いの方が強いかもしれない。と言うのも、乱戦になると歩の損得はそれほど大きくなくなるから。実際、▲5五同角に△5二飛と中飛車に振り、△6四銀から盤面全体の戦いへと進んで行った。

本譜は、それでもここからの2〜3筋の攻めが強烈だった。途中は決め手に近い手もあったようだが、後手もなんとか勝負形に持ち込もうとして第2問に進んでいる。

(問700-2解答)「飛車を取らせる位置」
飛車が死んでいる場合、普通はその一手を攻めに使う。しかし、ここでは△5六歩と飛車を取られた後、△5七歩成が急所の王手になるのが痛い。そこで▲1六飛と金の利きに逃げたのが実戦。駒の損得と言うより飛車を取らせる位置を変えたという意味合いの方が大きいかもしれない。

本譜は△7七香と打ち込んでとん死筋を見ながら反撃を企てたが、冷静に対応した先手がしっかり自玉を見ながら後手玉に必死をかけ、先手糸谷八段の勝利となった。なおこの将棋はこれ以上ないというくらいの早指しの一局。午前11時10分頃に決着し、その後は感想戦。その長い感想戦でも仕掛けられてからはなかなか後手の良くなる変化が出てこないまま放送が終了した。
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