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NHK杯に見る受けの手筋

(2019年8月5日出題)

第709問(2019年8月4日 木村九段-戸辺七段戦)
(問709-1)
先手木村九段、後手戸辺七段で戦型は後手のゴキゲン中飛車対超速。▲4六銀・△4四銀の対抗形から先手は二枚銀を繰り出し、後手も片美濃からツノ銀へと駒を前進。その駒組みの頂点で、先手が銀捨てから飛車切りを敢行し一気に終盤戦へ突入した。下図はその直後、銀を取り返したところで、この段階で駒の損得はない。細かく言えば、後手の持ち駒の飛車の方が角より使い勝手は良いだろうが、盤上の飛車は現時点では押さえ込まれており、金も遊び駒。そこでどうするか?ここでは振り飛車党ならひと目指したい手がある。但しそれで大丈夫かどうか読みを入れて、後手の指した次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問709-2)
先手の攻めに後手の受け、さらに後手からの攻めに先手も受けて、形勢は一進一退。そして今、後手が△6五銀と出てきたところ。次に△7六銀と出られると事件になるのでこの手は受けなければならない。そしてこの手を受けるのはほぼ二つ。どちらが良いかは難しいが、木村九段は三手一組とも言える手を見て次の受けの一手を指した。先手の指した次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問709-1解答)「一手かけても金を陣地に近づける」
ここで△3二金と寄るのがいわゆる大山ばりの金の動き。完全に遊び駒となっている△2二金は▲8八角の利きにも入っており、また▲4二角や銀がすぐに来るので出来るなら△3二金と寄っておきたい。但し、△3二金自体は単なる受けの手で相手に何も利いていないので、もし厳しい攻めがあるとかなりの緩手になる。たとえば▲5三に角や銀を打たれ、玉の側だけで決着が着いてしまうようではいけない。そうした筋が大丈夫なら、じっと△3二金と寄って手を渡すのが高等手筋だ。

本譜先手は、▲2四角から攻めに入った。銀桂交換で戦果を得たが、後手も巧みに反撃、その角を目標に遊び駒の金との交換に成功、形勢は細かく揺れ動いたと思われる。そして第2問に続いている。

(問709-2解答)「一時的な壁形とその解除方法」
△7六銀と進出させない為にはどちらかに桂を打つ一手だが、どちらに打ったら良いかは難しい。と言うのはどちらに打ってもそこが壁となり、相手はその逆方面から攻めてくる可能性が高いから。実戦、木村九段は▲8八桂とこちらから打ったので、振り飛車とすれば先手玉の右側から攻めて行きたい。しかし数手後、▲7七桂と跳ねたのが▲8八桂の後続手。これで▲8九に逃げ場所を作り、悪形の壁形とは言えなくなり、先手の陣形が固く、その分リードし終盤戦が進んで行った。

しかし本譜は簡単には終わらなかった。この後、勝負手で打った△4四角が△7七角成と切り込む形となり、先手玉が寄るかそれとも凌いで入玉出来るかという際どい勝負に。結局は、感想戦がなくなるほどの時間いっぱいの勝負になった為、捕まっていたかどうか定かでないが、最後は、らしい玉さばきで入玉、先手木村九段の勝利となった。
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