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NHK杯に見る受けの手筋

(2020年4月6日出題)

第744問(2020年4月5日 八代七段-屋敷九段戦)
(問744-1)
本局は、第70回、新年度最初の一局。先手八代七段、後手屋敷九段で戦型は相掛かり戦。双方浮き飛車中住まいの局面から先手が角を変え桂を跳ねて中央への殺到を見せると、後手はその桂頭の歩を狙い両者細かく動いた。下図は今△2八角といろいろなところでよく見る角を打ち込んだところ。先手も▲8二角と打ち、香を取り合えるなら互角だが、後手だけ香を逃げる余地がある。そこでどうするか?この香を取らせないための手段は?実戦の進行を三手まで。

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問744-2)
第1問の局面から、先手も様々な手を駆使し勝負形に持っていこうとしたが、冷静に対応され下図は後手優勢。ここは受けなくても、たとえば桂を跳ねたり飛車を下ろしたりする攻めでも十分だろうが、▲4一角△同玉▲6二角成の反撃があるので、やや危険ではある。そこでどうするか?ここでは一手受けることにより何手も攻めを遅らせることが出来る。実戦で指された後手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問744-1解答)「駒損しない唯一の受け方」
初期配置の桂頭に飛車や角を打つことは良くある。その場合、常にその大駒が捕まってしまわないかを考えなければいけない。たとえば問題図でも、先手に金や飛車があれば▲2九あるいは▲1八に打てば角が詰む。飛車の場合も▲2七歩と打たれると次の▲3九金が受からない。初段くらいでも、時にこうした駒が持ち駒ではなく質になっていたため見落とし、詰まされるということはあるので注意が必要。ただ、ここではもちろんそういうことはないので、そうなると▲1八香と逃げ、△1九角成に▲2七角と打つのが唯一の受けと言える。

本譜は、打ったこの角が働くかどうかが勝負に。そのため△2八馬に▲3五歩から動いたが、後手が冷静に対処し、良いタイミングで角を取り反撃すると後手優勢のまま終盤に突入、第2問に続いている。

(問744-2解答)「相手の攻めを封じる受け」
攻めても後手優勢は変わらないが、▲4一角からの攻めを残して置くと攻めに失敗した時反撃が厳しい。そこでじっと△4二金と寄ったのが辛い一着。これで後手玉に寄りつく術がなくなり、指すなら▲8二角成から迫るしかないが、後手玉は遠く逆転の余地はなくなった。

本譜はなんとこの△4二金を見て先手投了。さすがに早い投了で解説陣も驚いていたが、それだけ差があるということでもある。30分近い感想戦のほとんどは第1問以前の中盤での局面。本局は、その中盤の折衝で優位を得た後手の屋敷九段が着実に差を広げ、完勝で開幕戦を制した。
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