将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ

NHK杯に見る受けの手筋

(2020年6月29日出題)

第750問(2020年6月28日 高野智史五段-小林裕士七段戦)
(問750-1)
先手高野五段、後手小林七段で戦型は角換わり。先手の早繰り銀に後手の腰掛け銀で進んだこの将棋は両端の位を先手が取る珍しい形から3筋で一歩を得た先手が▲7五歩と桂頭を攻めて戦いが始まった。これに後手が反発。難しい中盤戦から終盤戦に突入。飛車と馬の交換から、下図は▲5五桂と金銀両取りに打ったところ。ここで後手はどうしたか?受けるか攻めるか、盤面全体を見て次の一手を決める。ここで指された後手の指し手は?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問750-2)
上図から攻め合いになるかとも思われたが、先手が受けを選んだ為、先手が入玉を目指し、これを後手が止められるかどうかという戦いになった。下図は今△9五龍と△9九にいた龍を引き上げて先手玉に迫ったところ。角一枚なのですぐに詰むという訳ではないが、かといって後手玉に詰めろもかからないので、何か受けるしかない。何をどのように受けるか難しい局面。ここで指された先手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問750-1解答)「手抜きの形-両取り逃げるべからず」
「両取り逃げるべからず」という格言は実戦でも時々出てくるが、実際には価値の高い方を逃げることも多い。たとえば、△5三歩がなくて、先手玉が上部脱出を狙えないようなら、△5三金右があまりに味良く、▲5五桂は疑問だ。しかしここでは、「逃げるべからず」というよりも、逃げる形がない。すなわち手抜きせざるを得ないという局面でもある。そして攻めるなら△4九飛と打ち、金取りと△8七歩を見合いにするのがひと目。これにやはり両方の狙いの一つだけ受けるのでは効率が悪いので、▲4三桂成から▲5二銀と攻めて、攻め合いになるかと思われた。

本譜は、▲6三銀不成とこちらの金を取り、△6七龍に強く▲7七金と引いた為、△8七歩▲9七玉で先手の入玉が止まるかどうかという将棋になった。そして▲8三まで入ったものの、味方の駒はなく、難しい局面のまま第2問となっている。

(問750-2解答)「急所を見極める読みと感覚」
自玉に様々な攻め筋がある場合、そして時間がないときは特にこうされては寄ってしまうという明確な手を防ぐ必要がある。ここでは△8一飛とと金を取られると先手玉は受けがなくなりそうだ。そこで▲6三角と打ったのが実戦。▲8一のと金を守り、場合によっては▲4一銀からの攻め(一段目の飛車の利きをさえぎる受け)も見ている。但し、実戦もそうなったように△9四龍から迫られると非常に際どい。

本譜は、(感想戦では)先手玉が捕まっている局面もあったようだが、ごちゃごちゃした入玉形で、難解な終盤戦を凌ぎ切り先手高野五段の勝利となった。
先週の問題へ/来週の問題へ

将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ