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NHK杯に見る受けの手筋

(2020年8月2日出題)

第758問(2020年8月1日 阿久津八段-斎藤明日斗四段戦)
(問758-1)
この対局も新型コロナの影響で深夜に放送されている。先手阿久津八段、後手斎藤四段で戦型は相居飛車戦。角換わりの出だしだったが、後手が角道を止め、△4三銀と上がった為、先手の矢倉対後手雁木風の駒組みとなった。その後、双方銀を腰掛け中盤戦に移ったが、局後「危機感が足りなかった」と言っていたように、いきなり後手が仕掛けて戦いが始まった。そして(感想戦で)研究手と言っていた強烈な角損の攻めが飛び出し、後手が踏み込む。下図はその直後。ちょっとハマリ形のようにさえ見えるが、実際は先手も銀を得しているので差は開いていない。もちろん王手なので何かそれを受けるしかないが、ここで指された先手の次の一手は?終盤ではちょっとでも受け方を間違えると即負けになる。ここでの正着は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問758-2)
上図から先手側にいろいろと受けの手が多く、短い時間での選択が難しい。龍をそのままに▲6六歩から▲6五歩と桂を取りに行った手がまずかったようで、急に後手が良くなった。下図は後手優勢。ただし今▲1七角と打たれたところで、こういう手には危険を察知する能力が必要。飛車が動くと龍取りになるので、そのことをしっかり頭に入れて応手を考える。ここで指された後手の次の一手は?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問758-1解答)「相手の攻め筋をしっかり読む」
王手なのでこれを防がなければいけないが、角合いを除けば、考えられるのは銀合い二つに▲6八玉の三択。▲6八玉は、△8九龍と桂を取れば▲7九金でうまいが、相手の攻めは常に一番やられると困る手順を読むこと。つまり本譜の△5四銀の他、△6九銀やいきなりの△5七桂成などを読み、玉が近すぎて危ないと思わなければいけない。また、▲5九銀はすぐに△5七桂成がありもちろんこれもダメだ。と言うわけで▲6九銀しかない、ということになるが、これが受けとしてもっともしっかりしている、ということも数多くの実戦で分かってくる。

本譜は、研究手順とは言え、角損の攻めなので形勢はまだ不明だった。しかし、△5四銀と角の去就を聞かれると逃げ場所がなく急激に形勢は傾いた。感想戦にも出ていたように、どこかで▲4八角と龍を追って長い戦いにすればまだ難しかったようだが、実戦は後手優勢で第2問になっている。

(問758-2解答)「素抜きの局面は細心の注意を」
この局面はかなり後手が良いので、たとえば△4五桂など特に受けずに攻めても十分そうだ。しかし、問題図のように飛車が動くと龍取りになるような局面は常に細心の注意を払って次の手を指さなければいけない。たとえば、(ほとんどココセだが)△2五桂と跳ねるような手は▲同飛△同歩に▲3九角と龍を取られて逆転する。これくらいの形勢差は特に級位者の将棋では頻繁に逆転するので注意が必要。
そして、ここでは実戦でも指されたように△3五角と合わせるのが手厚い攻防手。何もしないと△1七角成で終わりだし、▲同角は△同銀(△2八龍でも優勢だが△同銀がベスト)で先手の角打ちの意味がなくなる。

本譜は、▲2四飛と出たが、△6九龍と切ってから△2四角と手を戻し逆に後手の駒得となった。そして△5七銀成から攻め込むと、最後は先手玉を即詰みに討ち取り、後手斎藤四段の勝利となった。
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