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NHK杯に見る受けの手筋

(2020年8月1日出題)

第757問(2020年7月31日 渡辺大夢五段-菅井八段戦)
(問757-1)
この対局は新型コロナの影響で深夜に放送されている。先手渡辺五段、後手菅井八段で戦型は居飛車対三間飛車。但し振り飛車は独特の菅井流。後手は3筋の位を取り、△3二金から△3三金と上がってからの△3二飛。筋を知らない初心者のような駒の運びだが、これで不利にならないなら、将棋にはまだまだ分からないことがあるとその可能性を思わせる菅井流だ。対して先手は自然な駒組みで▲4七銀▲5七銀の二枚銀。そして先手が角交換を挑んで戦いが始まった。中盤、いろいろ変化はありそうだが互角に推移し、下図は意表の、ある意味筋悪の▲4一金を打ったところ。この攻めは”場合の攻め”で、後手にピッタリした受けがないことを見越した一着。△5一金は▲同金△同銀▲3三馬。△5一銀打と使ってしまうのは、▲3八飛と歩を払われた時、角一枚になってしまう。ここで指された後手の次の一手は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問757-2)
上図から△8四飛と回り端を攻めたがあるいはこの構想がよくなかったのかもしれない、徐々に先手が有利になっていった。そして終盤、先手は今▲2一飛と飛車を下ろし、優勢を意識したところ。この手は次に▲6二香を見ており、以下△7一金なら▲同飛成から詰み。なので▲6二香は二手必死というイメージがあり、先手玉に二手スキが続かないのであれば受けるしかないと考えるところ。ところがここで次の一手は驚きの一着だった。それは三手目の受けを見越した一着。ここからの進行を三手まで。後手はどのように凌いだか?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問757-1解答)「利かされでも仕方ない場合」
ここで△5二金と上がって受けたのは、かなり利かされた形だが、これ以外に受けがなく仕方ないという受け。もちろん持ち駒の銀を使ってしまっても攻めが切れないと見るなら△5一銀打と一枚入れておいた方が固いし守りだけを見れば相当良い。ただ、△2四飛と切る手はあっても角二枚では攻め切れないと見たのだろう、ここで菅井八段は△5二金と上がって辛抱した。

本譜は、この交換を入れてから▲3八飛と受けに手を入れ、その後攻め合いに。そして、駒得した先手が手堅く有利を拡大し、後は後手玉を寄せるだけに見えたのが第2問である。

(問757-2解答)「珍しい角を合わせる手筋」
問題図で△1四歩と金を取った時、「えっ!▲6二香打たれたら受けがないんじゃ?」と思ったが、そこで△7一角が読み筋の受け。但し非常に珍しい筋でほとんど見たことはない。ただ、この局面になればこれしかない受け方で、(ほとんど見ないのは)普通は一手前(▲6二香が来る前)に受けるか、角を持っていないか、あるいは相手玉に二手スキで迫れる手がある、などこのようなシチュエーションになることがないからだと思う。それでも知識として知っておくことは重要で、さらに似たような局面で実際に使えれば「強い!」ということになる。

本譜は、いっとき後手が凌ぎきったかと思われる場面もあったが、際どい局面をギリギリでつなげ、最後は歩一枚も残さないきれいな即詰みで先手渡辺五段の勝利となった。

なお最後、あまりにもきれいな即詰みで、しかもひと目余詰もなさそうに見えたので、そのまま「実戦の詰み」に出題しようかと思った。ところが柿木で余詰検証すると余詰有り。それを消す為、持ち駒の香だけ取ると、なんと今度こそ余詰なしでさらに難しくピッタリな詰み手順が成立したので、「今日の実戦の詰み」もどうぞ。
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