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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年6月14日出題)

第804問(2021年6月13日 村中七段-阿久津八段戦)
(問804-1)
先手村中七段、後手阿久津八段で戦型は相居飛車。矢倉の出だしから、後手が飛車先を受けずに銀の進出を優先する最新の形を選択。対して先手は横歩を取り一歩得を果たしたが飛車が狭く、後手はそこを突いて鋭く動いた。両者居玉のまま模様の取り方の難しい中盤戦へ突入したが、後手の角引きから金の進出を実現した構想が秀逸で、後手が徐々に有利へと進んで行く。しかしそれでも形勢は後手有利の60%台で推移し、難しい終盤戦が続いていた。そして、先手が踏み込んだ一瞬を突いて手筋一閃の一手が飛び出し後手優勢へ。下図はその直後。△4九飛と飛車を打ち込まれ、両桂取りが受からない。ただこうした所でも丁寧に受ければまだまだ難しいところはある。一気につぶされない先手の受け方とは。常識にとらわれない先手の指した次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問804-2)
上図からしぶとく粘るも後手の攻めも正確でAIの評価値はさらに開いていった。しかし人間同士の場合、一手で大逆転もあるのでまだ油断はできない。下図は今、▲4四歩と銀頭を叩かれたところ。こうした受けでは、何も考えなければ次の一手は一つしかないが、これもあるかな?と思っていた所へその手が映し出された。実際にはどこへ逃げても、どう応対しても後手優勢は変わらなそうだが、ここで指された後手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問804-1解答)「玉側の桂を取らせない”場合の受け”」
ここで▲7九金と引いた手が驚きの受け方だが最善手。なぜ驚きかは、この金に利きが玉しかない為、極めて不安定だから。たとえば、桂を持たれているだけで△7六桂一発でしびれる。ただここではこうして金を引いて▲8九の桂を守り、△2九飛成なら▲3九金と当ててもう一勝負というところ。

しかし、△4七歩成が軽手だった。▲同銀と取らせて△2九飛成とすることで、金引きを防ぎ▲3九銀の守りを強要。これで先手の持ち駒が歩だけになり、戦力が大幅ダウン。それでも玉の早逃げで形を作り、銀をぶつけ▲4四歩と叩いた局面が第2問である。

(問804-2解答)「終盤は駒の損得より速度」
△5二銀左と玉の方へ引くのは最も自然でそれでも悪くはない。しかし、終盤ではあえて玉の反対側へ引き、その駒を取らせている間に相手への攻めを間に合わせようという手筋もまれに出てくる。この「終盤は駒の損得より速度」という格言は、攻めの格言ではあるが、この場合のように受ける時でも損得より相手の速度を遅らせるという意味で同じだ。もし▲4二金なら△6一玉で▲3二金と銀得しても後手への攻めは大幅に遅れることになる。

本譜は、▲3三歩と筋良く攻めたが、その瞬間に△3八歩成と踏み込んで後手勝勢。最後はそのと金を△5八まで寄ると、寄せの見本のような押さえの金で必死をかけ後手阿久津八段の勝利となった。
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