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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年8月23日出題)

第814問(2021年8月22日 佐藤康光九段-阿久津八段戦)
(問814-1)
先手佐藤九段、後手阿久津八段で戦型は先手の力戦向かい飛車。▲7六歩△3四歩から▲5六歩の”挑発”に後手も角成りから△5七角を打ち、馬を作り力戦形の将棋となった。つまり先手の持ち角対後手の馬という構図で、昔から馬の方が良いという”常識”はあるもののその差は微差。AIも後手55%前後なのでほぼ互角。そしてその後は、構想力の問われる中盤戦が続く。下図は、先手も馬を作り銀頭に▲2四歩と叩いてからは先手ペース。とは言えやや有利なだけでまだまだ難しい。ここで後手の指した次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問814-2)
上図から後手が盛り返し大熱戦になった。下図は▲7六で馬の交換が行われ、▲同飛に△8五銀と△7四の銀を飛車に当てて出たところ。AIのない時代なら、この手も次の一手も自然な一着として問題にはならなかったかもしれない。しかし、△8五銀の前は後手が優勢だったのに、△8五銀と出た瞬間、先手勝率が79%、さらに次の当然の一着とも思える手を先手が指した瞬間、後手82%に変化。ただそうした評価値をここでは無視し、この局面で普通に考えたらどう指すべきかというところで問題にした。当然とも思える先手の指した次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問814-1解答)「格言:駒は中央へ向かえ」
序盤なら銀取りを放置することは考えられないが、この局面は歩の当たっている箇所も多い為、△5四歩や△3六歩などそれ以外の手も考慮に入る。しかし、実戦△6三銀は棋理に則った手。「駒は中央へ向かえ」という格言もあるように、遠くの方で遊んでいる駒を中央や玉の側に持っていくのは正しい駒の使い方。但し、すでにいろいろな所で駒が当たっているので、△6三銀の瞬間は相当怖い局面でもある。

本譜▲4六銀は穏便な手だが、△5四銀と使えれば、後手も引いた銀の顔を立てられた。評価値もここから後手に傾き反撃が始まる。しかし、終盤は一手指すごとに評価値がめまぐるしく動く乱打戦となり、その始まりが第2問である。

(問814-2解答)「飛車は動きの自由な所へ逃げる」
実戦▲7九飛は最も自然でこれしかないように見える。ところが、▲7九飛と引いた瞬間、評価値は後手優勢82%に。となると考えられるのは、逃げずに攻め合うのか、人間的には自然に見える位置ではなく、別のところへ逃げた方がより良いということだが、正解は分からない。ただ、普通飛車の逃げ場所は自由に動けるところに逃げた方が良いことが多く、特に初心者のうちは▲7九飛が良さそうという感覚は大切なこと。

本譜はこの後、評価値は乱高下した。何が正しいのかは一手一手検討しないと分からないが、最後は攻め抜いた先手が後手玉を即詰みに討ち取り、先手佐藤九段の勝利となった。
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