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NHK杯に見る受けの手筋

(2021年10月18日出題)

第822問(2021年10月17日 近藤誠也七段-八代七段戦)
(問822-1)
先手近藤七段、後手八代七段で戦型は角換わり戦。後手の早繰り銀に先手は腰掛け銀、さらに後手のガッチリ囲った矢倉に対し、▲8七金から▲8六歩の厚みで対抗した。仕掛けは、▲8五桂△8四銀と左辺に味を付けて後手の玉頭に殺到。この組み合わせの攻めが巧みで徐々に先手有利に。下図は先手優勢ながらも、後手もギリギリで耐えているところ。△4五歩に▲2四角と飛び出され、ゆっくりしていると▲1一歩成からの攻めを間に合わされる。ここで指された後手の次の一手は何か?
(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問822-2)
上図直後は先手勝勢90%まで行ったが、後手も粘り、先手の決め手に思えた▲4四銀の疑問手を出させ逆転、さらにAIの形勢は互角に戻るなど揺れ動いた。その後も、先手の攻め、後手の受けは続き、攻めきれるかどうかギリギリに見える局面も、AIは凌いでいるとの判断。下図は▲4三角成と成り返り、後手玉に詰めろをかけたところ。△2七歩成と取りたいが、▲3三馬△1四玉▲1五香△同成銀▲2四金までの5手詰。ここではその詰めろを防がなくてはならない。ここで指された後手の次の一手は何か?
(難易度・・・


(これより下に解答)

(問822-1解答)「攻め駒に当てる-相手の攻めを焦らせる」
△2五成銀と「切ってこい」と角に当てて引いたのが実戦。そうでなくても切りそうなところなので、局面によっては一手パスになりかねないが、何もしないと▲1一歩成から▲2一とが来る。それでははっきり負けなので、切られることは分かっていても、△2五成銀と角に当て、少しでも相手の攻めを焦らせることが実戦的な受け方。さらに、▲4二角成には△同玉と玉で取り、▲1一歩成や▲1三の成桂から離れることも利点。

本譜はそれでも先手優勢は変わらない。しかし、決めるとなると結構大変で、AIの評価値ほどには見えない難しい終盤戦は続いた。そして、いかにも決め手になりそうな▲4四銀を指した瞬間評価値が逆転。その後形勢は揺れ動きながらも、AIは後手優勢、つまり凌いでいると言っている局面が第2問である。

(問822-2解答)「攻め駒に当てるpart2-先手で守る受け方」
実戦ここで△4二金と、馬に当てながら△3三の地点を守った。終盤では、たとえば△3三馬を防ぐのでも、△2三金とか△4一桂とかで受けるのでは受け方として弱い。このような守り方では、相手はすぐに何かを(馬取りを防ぐ)必要はないので、別の手を指されてしまう。実戦のように、△4二金と馬に当てるのは、▲同馬と切られる心配はあるが、それが大丈夫なら、強く当てて受けた方が攻める方も急がされていることになる。

本譜はこの後もギリギリの勝負は続いた。人間同士、時間のない将棋では先手の方が勝ちやすそうだが、AIの評価値は後手優勢で凌げているという判断。ただその受けは、短い感想戦でも触れられたが、「先手玉に味を付けてから受けに回る」と言う複雑な受け方。
この受け方に失敗し、一気に大逆転、先手近藤七段の勝利となった。
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