将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ

NHK杯に見る受けの手筋

(2016年5月16日出題)

第548問(2016年5月15日 丸山九段-小林裕士七段戦)
(問548-1)
先手丸山九段、後手小林七段で戦型は角換わり。ただ、先手が▲3六歩から▲3七銀の早く繰り銀を目指したのに対し、後手も同じように△7四歩から△7三銀とした為、珍しい形となった。その後、後手が居玉のまま先攻、それに対し先手が反撃するという構図になり、下図中盤の難所を迎えている。今、▲3七角の利きを頼りに▲7四歩と取り込んだところ。次に▲7三歩成とされては後手敗勢。そこでここではどう指すべきか。実戦でも指された駒損をしない次の三手は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問548-2)
上図から先手は角打ちの場所を作り香を取り、さらに飛車を切る強襲をかけたが、後手も△8七歩の一手を入れ、もらった飛車を王手に打ち下ろし、先手玉に迫っている。今、3七の馬を△5九馬と入ったところ。次に△6九馬の一手詰なので受けるしかないが、ここではどのように受けたら良いか?受ける手自体の候補は少ないが、相手からの攻め、相手玉への攻め方など様々な要素を考えて次の一手を指す必要がある。先手丸山九段の指した一手は?

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問548-1解答)「駒損をしない唯一の応手」
ここで実戦は、△3七馬と角を取り、▲同桂に△7四銀と歩を払った。角と馬の交換はもちろん馬の方が損で、しかも△7四銀と後手を引くので出来れば△3六歩と歩でせかしたいところ。しかし後手の玉と飛車が近すぎて、▲7三歩成が飛車に当たり、さらに▲6二とは王手になってしまう為この手が利かない(「居玉は避けよ」「玉飛接近すべからず」という格言がまさにピッタリ)。また、単に△7四銀と取るのも、▲9一角成と先に香を取られ、すぐに駒を取り返せるなら良いがそのあてもない。と言うことで、実戦の△3七馬が仕方ないとは言えこれしかなく、これが駒損をしない唯一の応手ということになる。

本譜は▲7五歩から▲4五歩と敵陣を乱し、▲5五角と打って駒得を確定させた。しかし、後手も△3六歩から△5九角で反撃。難しい終盤戦へと突入していった。

(問548-2解答)「節約できるかどうかの判断」
この局面、▲6八金寄と寄って頑張れるかどうかと言うことと、持ち駒の金を使ってしまっても、後手玉を寄せられるかと言うのが受けの判断基準となる。持ち駒の金は出来れば使いたくはない。しかし▲6八金寄では△7六桂と打たれるとかなり危険に見える。もちろん後手の持ち駒も少ない為、まだ受けられる要素はたくさんありこれで悪いとも言えない。一方、金を使ってしまっても、▲2二飛や▲5四桂、さらに本譜の▲7一馬など後手玉に迫る手も結構ありそうで、それなら自陣をより安全にしておきたいと考える事もできる。
結局、丸山九段は自陣の安全を取り、▲6八金打と持ち駒の金を自陣に入れた。

上図から本譜は△6五歩とかなり遅そうにも見えるが、確実な手で先手の攻めをせかした。これに▲2四歩〜▲7一馬を利かしてから▲6四飛と打った手が攻防、駒を渡さない限り先手玉が詰めろにならないのを見越して後手玉に詰めろをかけ、最後は後手の形作りにきれいに詰ませて先手の丸山九段の勝利となった。

なお、少し形が違えば先手玉が詰めろになる為、そこから「今日の実戦の詰み」として作成したのでそちらもどうぞ。
先週の問題へ/来週の問題へ

将棋タウン(ホーム)へ/受けの手筋表紙へ