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NHK杯に見る受けの手筋

(2016年5月23日出題)

第549問(2016年5月22日 松尾八段-佐々木勇気五段戦)
(問549-1)
先手松尾八段、後手佐々木勇気五段で戦型は角換わり腰掛け銀。先手が▲4五の位を取り▲4六角と据え、満を持して▲5五銀のぶつけから▲1五歩と攻め掛かった。対して後手は、△7五歩から飛車の横利きで受けに利かし、▲1四香には△7六歩から攻め合いを目指した。そして今、△8六歩▲同歩と利かし、△8七歩と垂らしたところ。ここで先手の松尾八段はどう指したか?手抜いて攻め合いを目指すか、一旦受けに回った方が得なのか迷うところ。受けの手と言ってしまうと非常にやさしい一手となってしまうが、ここで指された先手の次の一手は何か?

(答えはこの下に)
(難易度・・・


(問549-2)
先手の鋭い攻めに後手も先手玉に嫌みを付けながら際どく凌いできた。今、△8九歩成の王手に▲同玉とと金を払ったところ。現在、後手玉には▲3四桂からのやさしい詰みがある。と言って、単にこの詰めろを防ぐだけでは、▲4三歩成が来るので勝てない。そこでここでは攻防の一手が必要になる。ここで指された後手佐々木五段の指した一手は?秒読みの実戦で指せれば有段者だが、攻防(詰めろ逃れの詰めろ)という大きなヒントを考慮すれば、級位者の人にも見つけてもらいたい一着。

(難易度・・・


(これより下に解答)

(問549-1解答)「受けるかどうかの判断」
矢倉の形(▲7七銀▲7八金型)で8筋を突き捨て△8七歩という垂らしは良く出てくる手筋。この歩に対し、▲同金と取るか、手抜いて攻め合うかは常に難しい選択となる。これはその時々の局面で読みを入れて指すしかなく、たとえばここでも手抜くなら▲1二歩成だ。ただ、△8八銀と打ち込まれると、▲6九玉△8九銀不成になる可能性は高く、この進行だと先手危ない。と言うことで、▲8七同金と歩を払ったのが実戦。6筋は薄くなり、△6六歩も相当な脅威だが、△8八銀からの攻めよりは一手遅いとの判断だ。

本譜は後手も単に攻め合うのでは勝てないと見て、歩を補充しながらの△1三桂。対して▲5五角が幸便なのぞきで受け方が難しく、先手が一手勝ちに近づいたかと思われた。しかし、ギリギリの攻防から攻守が一瞬にして逆転、第2問の局面となった。

(問549-2解答)「攻防の角」
ここでも時々取り上げる攻防の角、△3四角がこの一手とも言える「詰めろ逃れの詰めろ」。▲3四桂を防ぐと同時に4三の地点にも利かし、さらに大きいのは△7七桂からの詰みを見ていること。ただし、この詰み自体は長手数で非常に難しい。なので特にアマなら秒読みではまず読み切れない。ただ、実戦においては良くあるように、「おそらく詰みだろう」とか「かなり危険」という感覚は大切なものだ。

本譜も、先手玉には詰みがあった。しかし、受けるだけではそれこそ詰めろが次から次へ来るので、実戦は▲4三歩成と首を差し出した。そして最後は、△7七桂から長手数の即詰み。後手佐々木五段の勝利となった。

なお、△3四角では、(もちろんこんな風に打つことはないけれども)△3四桂とこの地点の先手の▲3四桂だけを防いでも後手玉には別の詰みがある。それを問題として「今日の実戦の詰み」を出題したのでそちらもどうぞ。
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